介護現場における心理的安全性とは? ~事故を防ぎ、ケアの質とチーム力を高めるために大切なこと~

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※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。

ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。

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📝 この記事の要約

【この記事で伝えたいこと】

心理的安全性は、単に職員が安心して働くためのものではなく、小さな気づきや失敗を共有し、事故予防や認知症ケアの質の向上につなげるための大切な土台です。

この記事では、誰もが安心して意見を出し合い、失敗から学び合えるチームの重要性と、そのような職場を育てるために管理者や職員が大切にしたい姿勢を解説します。


【要点】

  1. 心理的安全性とは何か、介護現場でなぜ重要なのかが分かる
    誰もが安心して質問・報告・意見交換できる環境が、事故予防や認知症ケアの質にどのようにつながるのかを解説します。
  2. ヒヤリハットの報告件数と、チームの安全性の関係を考える
    「報告が少ない=安全な職場」とは限らない理由や、失敗を隠さず共有することの大切さを紹介します。
  3. 心理的安全性を高めるための、リーダーと職員の具体的な行動が分かる
    意見の受け止め方、失敗への向き合い方、情報共有の仕組みなど、チームで実践できる取り組みを紹介します。

【この記事で分かること】

・心理的安全性とは何か、なぜ介護現場で重要なのか
・ヒヤリハットや失敗の報告が、事故予防やケアの質の向上につながる理由
・誰もが安心して意見を出し合えるチームをつくるための、リーダーと職員の実践的な取り組み

介護職・リーダー・管理者のそれぞれの立場から、職員の安心と利用者の安全を両立し、より良いチームケアを実現するための考え方と具体的な方法を解説します。

※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。

はじめに|優れたチームとは、どのようなチームなのか

介護の現場で、優れたチームとはどのようなチームでしょうか。

経験豊富で知識や技術に優れた職員が多いチームでしょうか。

あるいは、強いリーダーシップとカリスマ性を持つ管理者が、職員を引っ張っているチームでしょうか。

もちろん、職員一人ひとりの能力や、リーダーの力量は大切です。

しかし、それだけで優れたチームが形成されるわけではありません。

どれほど優秀な職員が集まっていても、互いに意見を言えず、疑問を抱えたまま仕事をしていたり、失敗を報告することをためらったりする職場では、その能力を十分に発揮できないことがあります。

一方で、経験や能力に違いがあっても、誰もが安心して質問でき、小さな変化や気づきを共有し、失敗から学び合えるチームは、組織として大きな力を発揮する可能性があります。

その土台となるのが「心理的安全性」です。

心理的安全性は、単に職員が仲良く、気持ちよく働くためのものではありません。

小さな事故の芽を見つけ、ケアの質を高め、利用者の安心や生活の質(QOL)を守るためにも重要な考え方なのです。

今回は、介護現場における心理的安全性について、その意味や必要性、そして心理的安全性の高いチームを育てるために大切なことを考えていきます。

心理的安全性とは何か

心理的安全性とは、簡単に言えば、

「このチームでは、疑問や意見、失敗を口にしても、馬鹿にされたり、不当に責められたりしない」と思える状態

のことです。

この概念を研究してきたハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授は、心理的安全性を

『チーム内で対人関係上のリスクを取っても安全である』

という、メンバーに共有された信念として説明しています。

例えば、介護現場で新人職員が会議中に、

「○○さんへの声掛けは、どうしてこの方法で統一しているのですか?」

と質問したとします。

そのとき、先輩職員から、

「そんなことはみんな分かっているよ」

「今さらそんなことを聞くの?」

「前にも説明したでしょう?」

と返されたら、どうでしょうか。

新人職員は、次から質問することをためらうかもしれません。

疑問があっても、会議では黙っているようになるかもしれません。

しかし、同じ質問に対して、

「確かに、どうしてこの方法にしているのか、きちんと説明できていなかったね」

「基本的なことだけど大切だから、みんなでもう一度確認しよう」

と返されたらどうでしょう。

その職員は、次も安心して質問できるはずです。

さらに、その質問をきっかけに、ほかの職員もケアの根拠を改めて考える機会になるかもしれません。

心理的安全性が高いチームでは、誰が発言したかよりも、何を発言したかが大切にされます。

新人だから、経験が浅いから、パート職員だからという理由で、その意見の価値が低くなるわけではないのです。

出典:Edmondson「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」

優れたチームほど失敗の報告が多い?

心理的安全性に関する研究には、興味深いものがあります。

エイミー・エドモンドソン教授は、1996年に発表した研究で、病院の医療チームにおけるエラーの発生や報告、そこからの学習について調査しました。

この研究では、チームによってエラーの報告状況に違いがあり、報告されたエラーの数だけでは、実際に起きたエラーの多さやチームの安全性を正確に判断できないことが示唆されました。

つまり、報告が多いことは、必ずしも失敗が多いことを意味しません。

普通に考えれば、優れたチームほど失敗は少ないように思えます。

しかし、この結果には別の解釈がありました。

それは、優れたチームでは失敗が多いのではなく、失敗を安心して報告できるため、表面化するエラーが多いのではないかというものです。

その後の研究では、心理的安全性が高いチームほど、質問や意見交換、失敗の共有といった学習行動が促されやすいことも示されています。

つまり、失敗の報告件数だけでチームの良し悪しを判断するのではなく、失敗を安心して共有し、そこから学べる環境があるかどうかが重要なのです。

出典:Edmondson「Learning from Mistakes Is Easier Said Than Done: Group and Organizational Influences on the Detection and Correction of Human Error」
   Edmondson「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」

ヒヤリハットが少ない職場は、本当に安全なのか

介護現場でも、同じことが考えられます。

例えば、AとBという二つのフロアがあったとします。

Aフロアでは、毎月30件のヒヤリハットが報告されています。

一方、Bフロアでは、毎月3件しか報告されていません。

この数字だけを見れば、Bフロアの方が安全に思えるかもしれません。

しかし、本当にそうでしょうか。

Aフロアでは、

「立ち上がったときに、少しふらついていた」

「食事中に、いつもよりむせることが多かった」

「車椅子のブレーキがかかっていない場面があった」

といった小さな気づきが、積極的に報告されているのかもしれません。

一方、Bフロアでは、

「このくらいなら報告しなくてもいい」

「報告書を書くと、あとでいろいろ聞かれて面倒だ」

「自分のミスだと思われたくない」

といった理由から、報告が控えられている可能性もあります。

つまり、ヒヤリハットが少ないことは、必ずしも安全な職場である証拠にはならないのです。

もちろん、報告件数が多ければ、それだけで優れた職場というわけでもありません。

本当に重要なのは、何が起きているのかを把握できていること、そして報告された情報を改善につなげられていることです。

報告の件数だけでなく、その内容や重大度、実際の事故発生状況、改善策が機能しているかまで確認する必要があります。

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心理的安全性が低い職場で起こること

心理的安全性が低い職場では、職員が必ずしも不満を口にするとは限りません。

むしろ、一見すると問題の少ない、静かな職場に見えることもあります。

会議では誰も反対意見を言わず、管理者の指示には全員が従い、目立った衝突もありません。

しかし、それが本当に良いチームであるとは限らないのです。

① 小さな変化が報告されなくなる

介護では、利用者の些細な変化に気づくことが重要です。

特に認知症のある方の場合、自分の身体の不調や気持ちを、言葉で十分に説明できないこともあります。

そのため、職員の「いつもと違う」という感覚が、重要な情報になることがあります。

しかし、そうした気づきを報告したときに、

「気にしすぎだよ」

「いつものことでしょ」

と繰り返し返されれば、職員は次第に報告しなくなるかもしれません。

本来であればチームで検討できた変化が、個人の中に埋もれてしまうのです。

② 分からないことを質問できなくなる

分からないことがあるのは、新人職員だけではありません。

経験豊富な職員であっても、知らないことや判断に迷うことはあります。

しかし、質問すると能力が低いと思われる職場では、職員は分かったふりをするようになるかもしれません。

その結果、曖昧な理解のままケアが行われ、職員ごとに対応が異なったり、誤った方法が続いたりする可能性があります。

「分からない」と言えることは、能力の低さではありません。

むしろ、分からないままにしないための、大切な行動なのです。

③ 不満が陰で語られるようになる

心理的安全性が低い職場では、問題や不満がなくなるわけではありません。

表立って意見を言えないために、職員同士の陰口や愚痴として表れることがあります。

「あのやり方はおかしいと思う」

「管理者は現場を分かっていない」

「どうせ言っても変わらない」

こうした言葉の背景には、本来であれば改善につながる意見が含まれているかもしれません。

もちろん、心理的安全性が高くなれば、すべての不平不満がなくなるわけではありません。

しかし、不満を建設的な意見として伝えられる環境があれば、問題を個人への批判ではなく、組織の課題として扱いやすくなります。

出典:Morrowら「Speaking up behaviours (safety voices) of healthcare workers: a metasynthesis of qualitative research studies」

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認知症ケアにこそ心理的安全性が必要な理由

心理的安全性は、さまざまな職場で重要とされています。

しかし私は、認知症介護の現場では、特にその重要性が高いのではないかと考えています。

なぜなら、認知症ケアには、明確な正解が一つに定まらない場面が数多くあるからです。

例えば、入浴を拒否する方がいたとします。

ある職員が声を掛けても、強く拒否されてしまう。

しかし、別の職員が声を掛けると、穏やかに入浴してくれる。

こうした場面は、介護現場では珍しくありません。

その違いは、声の大きさなのか、言葉の選び方なのか、時間帯なのか、それとも職員との関係性なのか。

理由は一つとは限りません。

だからこそ、職員それぞれの経験や気づきを共有する必要があります。

「私はこう声を掛けたら、うまくいきました」

「午前中よりも、午後の方が落ち着いているようです」

「入浴そのものではなく、服を脱ぐことに不安があるのかもしれません」

こうした情報が集まることで、その方に合った支援方法を考えやすくなります。

一方で、職員が自分の成功例だけを話し、うまくいかなかったことを隠すチームでは、情報が偏ってしまいます。

「うまくいかなかった」という報告も、より良いケアを考えるための貴重な情報です。

認知症ケアでは、本人の気持ちや身体の状態、環境、生活歴、人間関係など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

一人の職員が、そのすべてを把握することは難しいでしょう。

だからこそ、一人ひとりが持っている小さな情報を集め、チーム全体で考えることに意味があるのです。

心理的安全性は、職員個人が持っている情報を、チーム全体の知識へと変えていくための土台とも言えるのではないでしょうか。

そして、その積み重ねが、本人にとって安心できる生活や、QOLの向上につながる可能性があるのです。

出典:Graileyら「The presence and potential impact of psychological safety in the healthcare setting: an evidence synthesis」

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心理的安全性は「甘い職場」をつくることではない

ここで、一つ注意しておきたいことがあります。

それは、心理的安全性が高い職場とは、何を言っても許される職場ではないということです。

心理的安全性は、職員を甘やかすことでも、厳しい指導を避けることでもありません。

例えば、服薬ミスが起きたとします。

そのとき、

「誰だって間違えることはあるから、気にしなくていいよ」

と言って終わらせることが、心理的安全性ではありません。

まずは利用者の安全を確保し、必要な報告や医療的対応を行うことが最優先です。

そのうえで、何が起きたのかを確認し、原因を考え、再発防止につなげる必要があります。

その際に大切なのが、最初から職員個人を責めるのではなく、事実を正確に把握しようとする姿勢です。

「なぜこんなミスをしたの?」

「何回言えば分かるの?」

と責められれば、職員は次にミスをしたとき、報告することをためらうかもしれません。

一方で、

「まず報告してくれてありがとう」

「どのような状況だったのか、一緒に確認しよう」

「同じことが起きないように、何を改善できるだろう」

と対応すれば、失敗を学びに変えやすくなります。

ただし、故意の不正や虐待、重大なルール違反まで容認するという意味ではありません。

必要な指導や調査、責任の確認は、適切に行わなければなりません。

重要なのは、失敗を安心して報告できることと、仕事に対して責任を持つことを両立させることです。

心理的安全性と、仕事に求められる基準の高さは、対立するものではありません。

安心して意見を出し合えるからこそ、互いに改善を求め合い、より高い水準を目指せるチームになるのです。

心理的安全性を高めるために、リーダーができること

心理的安全性は、管理者が「今日から何でも話せる職場にしましょう」と宣言するだけで生まれるものではありません。

日々のやり取りの積み重ねによって、少しずつ育まれていくものです。

その中でも、管理者やリーダーの姿勢は重要です。

① 自分にも分からないことがあると認める

管理者だからといって、すべてを知っている必要はありません。

経験豊富なリーダーでも、知らないことや判断に迷うことはあります。

そのときに、無理に正解を示そうとするのではなく、

「私にも分からないから、一緒に調べてみよう」

「この件は、みんなの意見も聞いて考えたい」

と言えることが大切です。

リーダーが自分の限界を認めることで、ほかの職員も「分からない」と言いやすくなります。

優れたリーダーとは、何でも一人で解決できる人ではなく、一人では解決できないことを理解し、周囲の力を引き出せる人なのかもしれません。

② 誰の意見であっても、まずは受け止める

会議で新人職員が意見を述べたとき、その内容がすでに検討済みだったり、実現が難しかったりすることもあるでしょう。

しかし、その場で否定してしまえば、次の発言は生まれにくくなります。

「その視点は大切だね」

「以前にも検討したことがあるけれど、もう一度考えてみようか」

「今は難しいけれど、なぜそう思ったのか聞かせてほしい」

こうした応答が、発言しやすい雰囲気をつくります。

もちろん、すべての意見を採用する必要はありません。

意見を尊重することと、その意見に必ず従うことは別です。

大切なのは、発言したこと自体が不利益にならないこと、そして採用できない場合にも、その理由を丁寧に伝えることです。

③ 自分の間違いを素直に認める

管理者が間違った判断をすることもあります。

そのとき、自分の立場を守るために言い訳をしたり、部下に責任を押しつけたりすれば、職員はどう感じるでしょうか。

「管理者でさえ間違いを認めないのだから、自分も失敗を隠した方がいい」

と思われてしまうかもしれません。

反対に、

「さっきの私の判断は間違っていたね」

「教えてくれてありがとう。修正しよう」

と言える管理者であれば、職員も自分の間違いを認めやすくなります。

リーダーが失敗を認める姿勢は、失敗を隠さず共有する文化の出発点になります。

④ 報告された内容より先に、報告した行動を評価する

ヒヤリハットや事故の報告を受けたとき、管理者はどうしても原因や責任に意識が向きがちです。

もちろん、原因究明は重要です。

しかし、報告した職員に対して、最初から厳しい態度で接してしまえば、報告そのものが負担になります。

「報告してくれてありがとう」

この一言は、決して小さなものではありません。

報告を受け止めたうえで、必要な確認や指導を行う。

その積み重ねによって、職員は「問題が起きたときこそ、報告することが大切なのだ」と理解していくのです。

⑤ 意見や気づきを共有できる仕組みをつくる

心理的安全性を高めるためには、管理者や職員の言葉掛けだけでなく、意見を共有できる仕組みも重要です。

例えば、会議の最後に「気になっていることはありませんか?」と確認する時間を設けたり、日々の申し送りで小さな気づきを共有する機会をつくったりすることも、一つの方法です。

また、報告されたヒヤリハットについて、どのような対策が検討され、何が改善されたのかを職員に伝えることも大切です。

せっかく報告しても、その後どうなったのか分からなければ「報告しても意味がない」と感じてしまうかもしれません。

意見を言えることだけでなく、言ったことが組織の改善につながっていると実感できること。

そうした経験の積み重ねも、心理的安全性を育てるうえで重要なのです。

出典:O’Donovan・McAuliffe「A systematic review of factors that enable psychological safety in healthcare teams」
   Morrowら「Speaking up behaviours (safety voices) of healthcare workers: a metasynthesis of qualitative research studies」

心理的安全性は、日々の小さな対応から育っていく

心理的安全性は、一度の研修や会議で完成するものではありません。

例えば、管理者が会議で、

「何でも自由に意見を言ってください」

と伝えたとします。

しかし、その翌日に職員が疑問を口にしたとき、

「そんなことは自分で考えて」

と返してしまえば、職員はどちらの言葉を信じるでしょうか。

おそらく、実際に経験した後者の対応でしょう。

職員は、管理者の理念や方針だけを見ているわけではありません。

日常の何気ない言葉や態度から「この職場では何を言っても大丈夫なのか」を判断しています。

だからこそ、心理的安全性を育てるためには、日々の小さな対応が重要になります。

質問されたときに、面倒そうな顔をしない。

報告されたときに、まず話を最後まで聞く。

自分と異なる意見であっても、すぐに否定しない。

会議で発言が少ない職員にも、無理のない形で意見を求める。

そして、勇気を出して発言してくれたことを大切にする。

こうした行動の積み重ねが、少しずつチームの文化を変えていきます。

ただし、心理的安全性はリーダーだけでつくるものでもありません。

先輩職員が新人の質問をどう受け止めるか。

同僚の失敗をどう扱うか。

意見が対立したときに、相手を尊重できるか。

職員一人ひとりの行動も、チームの心理的安全性に影響します。

リーダーがその土台を整え、職員全員で育てていくものなのです。

出典:Jonesら「Interventions promoting employee ‘speaking-up’ within healthcare workplaces: a systematic narrative review of the international literature」

心理的安全性の高いチームは、なぜ強いのか

介護現場では、さまざまな問題が日々発生します。

利用者の体調変化、転倒や誤薬のリスク、職員間の認識の違い、家族からの相談など、すべてを一人の職員や管理者だけで解決することはできません。

だからこそ、チームで働く意味があります。

しかし、ただ複数の職員が同じ場所で働いているだけでは、チームとしての力を十分に発揮できません。

一人ひとりが気づいたことを共有し、互いの考えを理解し、必要に応じて支援方法を修正していく。

そうした協力関係があって初めて、チームとしての強さが生まれます。

心理的安全性が高い職場では、小さな疑問や失敗を共有しやすくなるため、問題を早い段階で発見できる可能性があります。

また、職員の意見が尊重されることで、ケアの改善案も生まれやすくなるでしょう。

自分の意見を聞いてもらえる経験は、職員の仕事への主体性や、チームへの信頼にもつながると考えられます。

もちろん、心理的安全性が高ければ、必ず事故が減り、不満がなくなり、ケアの質が向上するというわけではありません。

人員配置や教育体制、業務量、ケアの知識や技術など、ほかにも重要な要素は数多くあります。

また、心理的安全性が高くても、報告された問題に対して何も改善が行われなければ、職員の信頼は失われてしまうでしょう。

安心して発言できることと、その発言を実際の改善につなげること。

この二つがそろってこそ、心理的安全性は組織の力になるのです。

まとめ|優れたチームは、誰もが声を上げられるチーム

優れた介護チームをつくるために、優秀な職員を集めることや、強いリーダーを育てることは大切です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

どれほど優秀な職員であっても、意見を言えず、失敗を隠し、疑問を抱えたまま働く環境では、その能力を十分に発揮することは難しいでしょう。

反対に、経験や能力に違いがあっても、互いに意見を出し合い、失敗から学び、協力して課題を解決できるチームは、大きな力を発揮する可能性があります。

そして認知症介護では、職員一人ひとりの小さな気づきが、その方の生活を支える大切な情報になることがあります。

「いつもと少し違う気がする」

「こんな声掛けをしたら、笑顔が見られた」

「この対応は、少し見直した方がいいかもしれない」

こうした声が自然に上がる職場は、利用者の安心やQOLを守るうえでも、大きな強みを持っているのではないでしょうか。

心理的安全性は、職員を甘やかすことではありません。

失敗を許して終わることでも、意見の違いを避けることでもありません。

誰もが安心して意見を述べ、必要な指摘を受け止め、失敗から学び合いながら、より良いケアを目指せること。

それが、心理的安全性の高いチームの姿なのだと思います。

そして、そのようなチームをつくる第一歩は、管理者やリーダーが、

「自分にも知らないことがある。だからこそ、みんなの力が必要なのだ」

と認めることなのかもしれません。

優れたチームとは、決して誰も失敗しないチームではありません。

失敗を隠さず、小さな疑問や気づきを大切にし、互いの力でより良いケアへと変えていけるチーム。

そんな職場こそが、職員にとっても、そこで暮らす利用者にとっても、安心できる場所になっていくのではないでしょうか。

参考文献・出典

この記事では、以下の資料・論文などを参考に、認知症介護の現場での視点を加えて解説しています。

ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。

詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!

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