※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。
ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。
【この記事で伝えたいこと】
チームケアの質は、技術やマニュアルだけで決まるものではありません。人は「正しさ」だけで動くのではなく、理解され、関心を向けられていると感じたときに心が動きます。
この記事では、デール・カーネギーの『人を動かす』の考え方をもとに、人を動かす関わり方や人間関係がチームケアの土台になる理由を解説します。
【要点】
- 人は「正しさ」だけでは動かない理由が分かる
人は理屈よりも感情で動くという人間心理をもとに、なぜ正しい指摘だけでは現場が動かないのか、その背景にある心理を解説します。 - 人を動かすための基本的な関わり方が分かる
関心を寄せる、笑顔を忘れない、具体的に褒める、誤りを認めるなど『人を動かす』の原則を介護現場のチームビルディングの視点から紹介します。 - チームケアの質を高めるためのリーダーの視点が分かる
人を理解することや日常の会話・雑談が信頼関係を築く理由を整理し、人間関係を土台にしたチームづくりの考え方を解説します。
【この記事で分かること】
・なぜ人は「正しさ」だけでは動かないのか
・関心を寄せる・笑顔・褒めるなど、人を動かす基本的な関わり方
・人間関係がチームケアの質にどのようにつながるのか
介護現場でチームをまとめたい管理者やリーダーにとって、信頼関係を土台にしたチームづくりの視点が分かる内容です。
※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。
はじめに
介護の現場では、よくこんな悩みを耳にします。
「職員がなかなか言うことを聞いてくれない」
「チームがまとまらない」
「新人がすぐに辞めてしまう」
「指導しても、なかなか成長につながらない」
こうした問題が起きると、私たちはつい
「教え方が悪いのだろうか」
「指導力が足りないのだろうか」
と考えがちです。
しかし、長く現場にいるほど感じるのは、
これらの問題の多くは 技術や知識ではなく、人間関係にある ということです。
チームケアの質は人間関係で決まる
介護はチームで行う仕事です。
そしてチームとは、結局のところ 人と人との関係性 です。
その関係性を築くヒントとして、長く読み継がれている名著があります。
それが、デール・カーネギーの名著『人を動かす』です。
この記事では、その中でも特に 介護現場のチームビルディングに役立つ原則 をいくつか取り上げながら、
「人を動かす」とはどういうことなのか
そしてそれが チームケアの質とどう関係しているのかについて考えていきたいと思います。
人は理屈ではなく感情で動く
人は正しさだけでは動かない
まず前提として大事なのは、この事実です。
私たちはつい「正しいことを言えば相手は納得する」と思ってしまいます。
しかし実際には、人は必ずしもそうは動きません。
人は理屈だけで動く生き物ではありません。
どれだけ正しいことでも、
「その言い方はない」
「自分を否定された」
そう感じた瞬間に、人の心は閉じてしまいます。
人は理解されたときに動く
逆に、
- 自分を理解してくれる
- 自分を見てくれている
- 自分に関心を持ってくれている
そう感じたとき、人は自然と
「この人の力になりたい」
と思うものです。
つまり人は、
理屈よりも感情で動く
生き物なのです。
なぜ正しいことを言っても人は動かないのか
介護の現場では、正しさだけでは人は動きません。
例えば、
「それは事故につながるからやめた方がいい」
「そのやり方はルールと違う」
こうした指摘は、内容としては正しいことが多いでしょう。
しかし、伝え方によっては
「自分のやり方を否定された」
「ダメ出しをされた」
と受け取られてしまうことがあります。
その瞬間、人の心は防御モードに入ります。
言い訳をしたり、反発したり、あるいは何も言わなくなったりするのは、決して珍しいことではありません。
人を動かすのは正しさではなく関係性
だからこそ、人を動かすためには
正しさだけではなく、関係性が必要
なのです。
カーネギーがまとめた30の原則は、
こうした人間心理を踏まえたものです。
そして興味深いことに、その多くは
「当たり前だけれど、忙しい現場では忘れられがちなこと」
ばかりなのです。
介護現場で特に重要な「人を動かす」原則
①相手に心から関心を寄せる
人は、自分に関心を持ってくれる人に好意を抱きます。
これは職場でも同じです。
管理者やリーダーが
- 名前を覚えている
- 最近の様子を気にかける
- 体調を気遣う
- 少し雑談をする
それだけで、職員の安心感は大きく変わります。
人は
自分を知らない人のためには頑張れません。
しかし
自分を理解してくれている人のためなら頑張れる。
これは多くの現場で見られる事実です。
②笑顔を忘れない
とてもシンプルな原則ですが、意外と大きな影響を持っています。
表情は、言葉以上に相手に伝わります。
無表情で指示を出されるのと、
笑顔で声をかけられるのとでは、受け取り方がまったく違います。
忙しい現場ほど笑顔が減ってしまう
忙しい現場では、どうしても表情が硬くなりがちです。
そして、リーダーの表情は
職場の空気をつくる と言っても過言ではありません。
だからこそ、笑顔が職場の空気を和らげるのです。
ほんの少しの笑顔が、チームの雰囲気を大きく変えることは、決して珍しいことではないのです。
③心から褒める
カーネギーはこう言います。
「人は批判によってではなく、賞賛によって成長する」
これは、介護の現場でも同じです。
介護の現場では、どうしても
- 注意
- 指摘
- 改善
といった言葉が増えがちです。
もちろん改善点を伝えることも大切ですが、そればかりでは職員の心は疲れてしまいます。
形だけの褒め言葉では人は動かない
ただし「褒める」といっても、形だけの言葉ではあまり意味がありません。
例えば、
「いつもありがとう」
「頑張ってるね」
といった言葉も大切ですが、それだけでは相手に響かないこともあります。
本当に相手に届くのは、
「自分のことを見てくれている」と感じられる言葉です。
人に届くのは「具体的に見ている言葉」
たとえば、
「さっき〇〇さんにかけていた言葉、とても優しかったね」
「今日の記録、状況がとても分かりやすかったよ」
そうした言葉は、
「自分のことをちゃんと見てくれている」
という安心感につながります。
そしてその安心感が、職員の自信や成長につながっていくのです。
④誤りを認める
リーダーや管理者は、つい
「間違ってはいけない」
と考えてしまいがちです。
しかし実際には、
誤りを認められる人の方が信頼される
ことが多いものです。
「さっきの言い方はよくなかったね」
「自分の判断ミスだった」
そう言える上司に対して、職員は安心感を持ちます。
完璧な上司よりも、
正直な上司の方が信頼される
のです。
⑤誤りを直接指摘しない
これは少し難しいかもしれませんが、とても重要なことです。
人は、正面から間違いを指摘されると
防御反応 を起こします。
その結果、
- 言い訳をする
- 反発する
- 心を閉ざす
といった状態になりやすくなります。
そのため、
「それは違うよ」
と伝えるよりも、
「こうすると、もっと良くなるかもしれないね」
「こういう方法もあるんじゃない?」
といった 提案型の伝え方 の方が効果的です。
ほんの少し言葉を変えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。
やってはいけない「人の動かし方」
ここまで読んで、「当たり前のことだ」と感じた方もいるかもしれません。
しかし実際の現場では、次のようなコミュニケーションが起きてしまうことがあります。
- 人前で注意する
- 正論で押し切る
- 相手の背景を考えずに指摘する
- 否定から入る
こうした関わり方は、短期的には行動を変えることがあっても、長期的には信頼関係を壊してしまいます。
人は、強制されると動くのではなく、
納得したときに動く ものです。
そしてその納得は、
信頼関係の中で生まれるものです。
私がいつも心に留めている、2つの言葉
管理者として働く中で、私がいつも心に留めている言葉があります。
それは、
「部下は、仕事ができる上司ではなく、自分のことを知ってくれている上司について行く」
という言葉です。
どれだけ能力が高くても、
自分を理解してくれていないと感じる上司には、人はなかなか心を開きません。
逆に、自分を気にかけてくれる人に対しては、
「この人の力になりたい」
と思うものです。
● 人が辞める理由は、会社ではなく上司
そしてもう一つ、
「社員は会社に入り、上司の元から去っていく」
という言葉です。
どれだけ理念や制度が整っていても、
日々関わるのは直属の上司です。
その関係が良好でなければ、人は長く働くことが難しくなってしまいます。
人を知るために必要なこと
管理者として働いていると、
「もっと現場を見てほしい」
という声を聞くことがあります。
もちろんそれも大切ですが、
私はそれと同じくらい
「人を見ること」
が大事だと思っています。
● 人を見るとはどういうことか
どんな思いで働いているのか。
何にやりがいを感じているのか。
今、どんなことで悩んでいるのか。
そうしたことを知らないままでは、
その人に合った関わり方をすることはできません。
人を動かすということは、
結局のところ
人を理解すること
なのかもしれません。
● 人を理解するための方法
では、どうすれば職員のことを理解できるのでしょうか。
特別なことが必要なわけではありません。
- ちょっとした雑談
- 何気ない会話
- 日常の声かけ
- インナービュー(内面を知る対話)
こうした時間の積み重ねです。
忙しい現場では、雑談は無駄に思えることもあります。
しかし実際には、
雑談こそが信頼関係をつくる
ことが多いのです。
雑談こそが信頼関係をつくる
人は、自分の話を聞いてくれる人に安心感を持ちます。
その安心感が、
- 相談のしやすさ
- 情報共有
- チームワーク
につながっていきます。
チームケアは人間関係から生まれる
介護の質は、チームの質に大きく左右されます。
そしてチームの質は、
人間関係によって決まる と言っても過言ではありません。
どれだけマニュアルが整っていても、
- お互いを知らない
- 信頼していない
- 気軽に話せない
そんなチームでは、良いケアは生まれません。
だからこそ、人を動かすとは、
「この人と一緒に頑張りたい」と思ってもらうこと
なのだと思います。
チームケアを磨くとは何か
チームケアを磨くということは、
結局のところ『人間関係を磨くこと』なのかもしれません。
その積み重ねが、
ご利用者にとって安心できるケアへとつながっていくのだと思います。
人を動かすとは、命令することではありません。
「この人と一緒に働きたい」と思ってもらうこと。
それこそが、チームケアを支える一番の力なのではないでしょうか。
人は、人によって動かされるのです。
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
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