※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。
ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。
【この記事で伝えたいこと】
「認知症=アルツハイマー型」と思っていませんか?
認知症はひとつの病気ではなく、さまざまな原因によって起こる“状態”です。
この記事では、4大認知症以外の原因や、5番目・6番目に多い認知症、そして治療によって改善が期待できる「可逆性認知症」について分かりやすく解説します。
【要点】
- 「認知症=アルツハイマー型」という思い込みが整理できる
認知症はひとつの病気ではなく、さまざまな原因によって起こる“状態”であることを分かりやすく解説します。 - 認知症の種類によって症状と関わり方が変わることが分かる
4大認知症に加え、パーキンソン病認知症やアルコール性認知症など、それぞれの特徴と対応の違いを紹介します。 - 治療で改善が期待できる「可逆性認知症」と、早期受診の重要性が分かる
見逃されやすい原因と、早期受診・適切な対応によって改善する可能性について解説します。
【この記事で分かること】
・認知症が“ひとつの病気ではない”理由
・4大認知症以外にもある多様な原因
・5番目・6番目に多い認知症の特徴と関わり方
・治療によって改善が期待できる「可逆性認知症」の具体例
家族介護・介護職のどちらでも、
「決めつけない視点」と適切な受診・関わり方のヒントが得られ、
『もしかして?』と思ったときの行動につながる内容です。
※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。
「認知症 = アルツハイマー型」と思っていませんか?
認知症という言葉を聞くと、多くの方が「物忘れ」をイメージします。
しかし実際には、認知症は単なる記憶の問題ではなく、
「脳の働き全体」に影響が出る状態です。
そのため、症状も人によってさまざまです。
記憶障害だけでなく、判断力の低下、感情のコントロールの難しさ、注意力の低下など、日常生活のあらゆる場面に影響が出てきます。
認知症は“ひとつの病気ではない”
ここがとても重要なポイントです。
認知症は病名ではなく「状態」を表す言葉です。
つまり、その原因となる病気が何かによって、症状も経過も大きく変わります。
だからこそ「アルツハイマー型だけではない」という理解が、
適切な対応の第一歩になるのです。
認知症の中で最も多いのは?
たしかに、認知症のなかで最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、全体の約6割を占めているといわれています。
他にも『脳血管性認知症』『レビー小体型認知症』『前頭側頭型認知症』を合わせて「4大認知症」と呼ばれていることが多いです。
しかし実は、これ以外にも認知症を引き起こす原因はたくさんあります。
しかもその中には、治療によって改善が期待できる――“治る認知症”もあるのです。
今回は「4大認知症以外の原因」と「5番目・6番目に多い認知症」、そして「可逆性(治る可能性のある)認知症」について、分かりやすくお伝えいたします。
4大認知症とは?
まずおさらいとして、代表的な4つの認知症を簡単に紹介します。
- アルツハイマー型認知症:記憶障害が中心。ゆっくり進行するのが特徴です。
- 脳血管性認知症:脳梗塞や脳出血などのあとに起こることが多く、記憶より「感情の浮き沈み」や「意欲の低下」が目立ちます。
- レビー小体型認知症:幻視や体のふらつき、認知の波があるタイプです。
- 前頭側頭型認知症:感情や行動のコントロールが難しくなるのが特徴。感情の抑制がきかなくなり、強い言葉や自己中心的な行動が見られることもあります。
実はこれら以外にも、認知症になる原因はたくさんあるのです。
4大認知症はよく知られていますが、実際の現場では「混ざり合っている」ケースも少なくありません。
例えば、アルツハイマー型認知症に脳血管障害が重なっている場合など、複数の要因が関係していることもあります。
そのため「このタイプだからこう対応すればいい」と単純に分けられないのが、認知症ケアの難しさでもあります。
“分類”よりも大切な視点
大切なのは、診断名そのものよりも
「今、その人にどんな症状が出ているか」
という視点です。
同じアルツハイマー型認知症でも、不安が強い方もいれば、穏やかに過ごされる方もいます。
分類はあくまで理解の入り口であり、実際のケアは“目の前のその人”に合わせて考えることが重要です。
意外と多い! 4大認知症以外の原因たち
認知症は「記憶の病気」ではなく「脳の病気」です。
つまり、脳に影響を与える病気や状態なら、すべて認知症の原因になり得るということです。
例をあげると……
- パーキンソン病
- 長年の飲酒(アルコール性認知症)
- 頭のケガ(慢性硬膜下血腫)
- ビタミンB1やB12の欠乏
- 甲状腺の病気(橋本病など)
- 正常圧水頭症(NPH)
- HIVや梅毒といった感染症
- 自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎など)
- うつ病(仮性認知症)
- 抗不安薬や睡眠薬など薬の副作用
4大認知症に続く、2つの認知症
【5番目】パーキンソン病認知症(PDD)
パーキンソン病が進行することで起こる認知症です。
発症してから10年ほどたち、運動症状(手のふるえや筋肉のこわばり)に加えて、注意力や判断力の低下、幻視が見られるようになります。
言葉が出づらく、思考もゆっくりになるため、会話についていけず無口になる方もいます。
また、テーブルの上の影を「虫」と誤認して払ったり、部屋の隅に「人がいる」と話すなど、幻視もよく見られます。
💡 接し方のヒント
- 一度にたくさん話さず、ゆっくり・短く伝える
- 幻視があっても否定せず、安心感を持ってもらう
- 抗精神病薬が逆効果になることがあるので、薬の扱いや医師との連携は慎重に
【6番目】アルコール性認知症
長年の多量飲酒が原因で、脳が萎縮したり、ビタミンB1の欠乏によるダメージが蓄積して発症します。
新しいことが覚えられず、昔の話ばかりを繰り返すのが特徴です。
しかもその話は「お酒を飲んでいたころ」の話ばかり──
これは記憶障害だけでなく、「自分はこんなに立派だった」と自尊心を保ちたい心理も影響しているといわれます。
金銭管理の失敗や、突然怒り出すなどの前頭葉の障害も見られ、トラブルになりやすいタイプでもあります。
💡 接し方のヒント
- 否定せず、昔話は「そのとき楽しかったんですね」と受け止める
- 日課を決めて、忘れても自然に行動できる仕組みをつくる
- ビタミン補給や禁酒が重要なので、医師と連携を
ここまで見てきたように、認知症の種類によって症状の現れ方は大きく異なります。
そしてその違いは、関わり方にも大きく影響します。
例えば、幻視がある方に対して事実を訂正し続けると、不安や不信感を強めてしまうことがあります。
一方で、意欲低下が目立つ方には、無理に活動を促すことが逆効果になることもあります。
“正しさ”よりも“安心”
認知症ケアにおいて大切なのは、常に正しい情報を伝えることではありません。
「その人が安心して過ごせるかどうか」がひとつの基準になります。
事実を伝えることよりも、不安を和らげること。
行動を正すことよりも、気持ちを受け止めること。
そうした視点が、結果として穏やかな生活につながっていきます。
実は“治る”こともある!?可逆性認知症とは
認知症はすべてが進行する病気ではありません。
原因によっては改善するものもあります。
これは「可逆性認知症」と呼ばれ、
原因を取り除けば改善が期待できる認知症なのです。
代表的な例は次の通りです。
| 原因 | 対応 |
|---|---|
| 正常圧水頭症 | 脳脊髄液の流れが悪くなり、脳が圧迫される。シャント手術で脳の圧迫を改善すれば、回復することがある。 |
| 慢性硬膜下血腫 | 頭を打ったあと、ゆっくり血がたまり脳を圧迫。手術でたまった血液を取り除けば回復可能。 |
| ビタミンB1・B12の欠乏 | サプリメントや食事療法で改善することが多い。 |
| 甲状腺機能低下症 | 橋本病などで起こるが、ホルモン治療で改善。 |
| 薬剤性認知症 | 睡眠薬や抗不安薬の副作用として表れます。減薬で回復することも。 |
| うつ病による仮性認知症 | 認知症と似たような症状が現れますが、実際には認知症ではありません。うつ病治療で改善可能。 |
認知症は“種類を知る”ことが大切
ここまで読んでいただくと、「認知症にはさまざまな原因がある」ということが見えてきたのではないでしょうか。
『認知症 = アルツハイマー型』というイメージが強いですが、実は原因はさまざまです。
そしてその中には、治療や対応によって改善が期待できるものも含まれています。
「お酒の影響」「脳の病気」「ビタミン不足」「薬の副作用」など、対応次第で改善できるものも少なくありません。
“決めつけない”ことが大切
認知症かもしれないと感じたとき、
「年のせいだから仕方ない」
「もう治らないから…」
と決めつけてしまうのは、とてももったいないことです。
実際には、原因を特定することで症状が改善するケースもあります。
だからこそ大切なのは「もしかして?」と思ったときに、立ち止まらないことです。
身近な人に「いつもと違う」サインが見られたら、ぜひ専門医やかかりつけ医に相談してみてください。
より早く正確な診断を受けることが、その方を救うことになるかも知れません。
身近な人を支えるために、まず「知ること」から
「認知症=アルツハイマー型」と思いがちですが、実際にはさまざまな原因があり、中には生活習慣やビタミン不足、薬の影響など、対処によって改善が期待できるものもあります。
「認知症だから治らない」と決めつけず、まずは正確な診断を受けること。そして「もしかして?」と思ったときに、早めに専門家へ相談することがとても大切です。
迷ったときは、まずは「かかりつけ医」に相談することからで大丈夫です。
家族として向き合うときに大切なこと
家族として認知症と向き合う中で、多くの方が
「何が正解か分からない」
「この人は本当に認知症なの?」
「どうすればいいのか分からない」
と悩むことがあります。
そんなときは“知識”が不安を減らし、関わり方を見直すヒントになります。
完璧な対応を目指す必要はありません。
大切なのは「今、その人にとって何が必要か」を少しずつ考えながら、一緒に歩んでいくことです。
戸惑いながらも寄り添おうとする気持ちは、必ず相手に伝わります。
焦らず、ひとつずつ向き合っていただきたいと思います。
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
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