※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。
ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。
【この記事で伝えたいこと】
サルコペニアは、単なる「加齢による筋肉の衰え」ではなく、転倒や活動量の低下、その人らしい生活にも関わる重要な問題です。
この記事では、認知症高齢者に起こりやすい生活の変化にも目を向けながら、サルコペニアに早く気づくポイントと「動ける身体」を守るために介護の中でできることを解説します。
【要点】
- サルコペニアを「年齢による衰え」で終わらせないための基礎が分かる
サルコペニアとは何か、ロコモ・フレイルとの違いや、筋肉量・筋力・身体機能の低下が転倒や生活に与える影響を解説します。 - 認知症高齢者だからこそ注意したい「生活の変化」が分かる
外出や家事、役割の減少、過度な介助などによって身体を動かす機会が失われる可能性と、日常の小さな変化から筋力・身体機能の低下に気づくポイントを紹介します。 - 「動ける身体」を守るために介護でできることが分かる
運動や栄養だけでなく「やってあげすぎない」「生活そのものを運動にする」「動きたくなる理由をつくる」といった、本人のできることと生活を守るための実践的な視点を解説します。
【この記事で分かること】
・サルコペニアとは何か、ロコモ・フレイルとの違い
・筋肉の衰えが転倒や認知症高齢者の生活に与える影響
・筋力や身体機能の低下に早く気づくためのポイント
・運動・栄養・日常生活の中で「動ける身体」を守るための考え方
家族介護・介護職のどちらでも、サルコペニアを単なる「年齢による衰え」で終わらせず、その人のできることや生活を守るために役立てられる内容です。
※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。
はじめに
「最近、歩くのが遅くなった気がする」
「以前より立ち上がるのに時間がかかる」
「何もないところでつまずくことが増えた」
高齢になると、このような変化が少しずつ見られることがあります。
そして私たちは、それをつい、
「もう歳だから仕方がない」
と考えてしまうことがあります。
もちろん、加齢によって筋肉量や筋力が低下していくこと自体は自然な変化の一つです。
しかし、その変化が大きくなり、筋力や身体機能の低下につながっている場合には「サルコペニア」という状態になっている可能性があります。
サルコペニアは、転倒や骨折、活動量の低下、そしてその先にある要介護状態とも深く関係する重要な問題です。
特に認知症のある高齢者では、
- 外出する機会が減った
- 自分から何かをしようとすることが減った
- 転倒が心配で周囲が動かせなくなった
- 食事量が減った
- 生活の中で役割を持つ機会が減った
といった変化が重なることがあります。
つまりサルコペニアは、単に「歳を取って筋肉が減る」という話ではありません。
その人がどのような生活をしているのかという、介護そのものと深く関係する問題でもあるのです。
サルコペニア・ロコモ・フレイルは何が違う?
一方で、高齢者の身体機能の低下について調べていると、
「サルコペニア」「ロコモ」「フレイル」という似た言葉を目にすることがあります。
この3つは重なり合う部分が多いため「何が違うのだろう?」と分かりにくく感じるかもしれません。
そこでまず、この記事で扱う「サルコペニア」がどこに注目した概念なのか、簡単に整理しておきます。
| 用語 | 簡単にいうと | 記事の主役 | 読者に持ち帰ってほしいこと |
|---|---|---|---|
| サルコペニア | 筋肉量・筋力・身体機能が低下した状態 | 筋肉 | 「筋肉の衰えは年齢のせい」で終わらせず、早く気づく |
| ロコモ | 運動器の障害によって移動機能が低下した状態 | 立つ・歩く・移動する力 | 「まだ歩ける」だけでなく、移動能力の変化を見る |
| フレイル | 心身の予備能力が低下し、要介護へ移行しやすくなった状態 | 生活する力全体 | 身体だけでなく、栄養・心理・認知・社会参加まで見る |
この3つは、それぞれ完全に別々のものではなく、互いに重なり合い、影響し合う部分の多い概念です。
その中でも、この記事で特に注目するのは「筋肉」です。
「最近、歩くのが遅くなった」
「立ち上がりにくくなった」
「以前より疲れやすくなった」
そんな日常の小さな変化の背景に、筋肉量や筋力の低下が隠れていないか。
そして、認知症のある高齢者の生活の中で、私たち家族や介護職はその変化にどう気づき、何ができるのかを考えていきます。
サルコペニアとは?
サルコペニア(sarcopenia)とは、簡単にいえば、
加齢などによって筋肉の量や筋力が低下し、身体機能にも影響を及ぼす状態です。
単に「筋肉が少ない」というだけではなく、筋肉量・筋力・身体機能などを組み合わせて評価することが重要とされています。
たとえば、身体が細くても元気に歩き、しっかり立ち上がれる高齢者もいます。
反対に、見た目にはそれほど痩せていなくても、立ち上がる力や歩く力が大きく低下していることもあります。
だからこそ、
「痩せている=サルコペニア」
「体重がある=大丈夫」
とは限らないのです。
出典:日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」
なぜ高齢になると筋肉が減っていくのか
筋肉は、何もしなくてもずっと同じ状態で維持されるものではありません。
加齢そのものに加えて、
- 身体活動量の低下
- 栄養不足
- 病気
- 入院や安静
- 外出機会の減少
など、さまざまな要因によって減少していきます。
特に重要なのが、
「動かないから筋肉が減り、筋肉が減ったからさらに動かなくなる」
という悪循環です。
たとえば、
歩くことが少なくなる
↓
下肢の筋力が低下する
↓
歩くことが大変になる
↓
さらに歩かなくなる
↓
さらに筋力が低下する
という循環です。
これは高齢者介護の現場でも、決して珍しいことではありません。
「最近あまり歩かなくなった」という変化は、単なる生活習慣の変化ではなく、サルコペニアの入口になっている可能性もあるのです。
出典:EWGSOP2「Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis」
サルコペニアはなぜ転倒につながるのか
サルコペニアを考えるうえで、介護現場で特に重要なのが転倒との関係です。
歩くという動作には、思っている以上に多くの筋肉が使われています。
脚を前に出す。
身体を支える。
左右のバランスを保つ。
つまずいたときに踏ん張る。
立ち止まる。
方向転換する。
こうした動作を筋肉が支えています。
そのため筋力や身体機能が低下すると、
「歩けるか、歩けないか」
という二択ではなく、
「歩けてはいるけれど、転倒を回避する能力が低下している」
という状態が起こります。
ここは、介護現場では非常に重要なポイントだと思います。
出典:Yeungら「Sarcopenia and its association with falls and fractures in older adults」
「歩ける人」だから安全とは限らない
たとえば、居室からリビングまで一人で歩けている方がいたとします。
一見すると歩行能力は保たれています。
しかし、
- 立ち上がった直後にふらつく
- 足が十分に上がらない
- 歩幅が小さくなっている
- 方向転換でバランスを崩す
- 疲れると急激に歩行が不安定になる
- つまずいたときに足が出ない
といった変化が起きているかもしれません。
つまり見るべきなのは、
「歩けているか」だけではなく「どのように歩いているか」
なのです。
転倒は突然起こったように見えても、その前には小さな身体機能の変化が積み重なっていることがあります。
認知症の方では、なぜサルコペニアに注意が必要なのか
認知症そのものが、すべての人に直接サルコペニアを引き起こすわけではありません。
しかし、認知症によって生活が変化することで、結果的に筋肉を使う機会が減ってしまうことがあります。
また、サルコペニアと認知機能低下との関連については、複数の研究をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析でも報告されています。ただし、両者に関連があることと、どちらかがもう一方を直接引き起こすことは同じではありません。
出典:Cabett Cipolliら「Sarcopenia Is Associated with Cognitive Impairment in Older Adults」
認知症介護の現場では、それに加えて「認知症になった後の生活の変化」にも目を向ける必要があります。
たとえば、以前は毎日散歩していた方が、
「どうやって帰ればいいか分からないから」
という理由で一人では外出できなくなる。
料理をしていた方が、
「危ないから」
という理由で台所に立たなくなる。
掃除や洗濯をしていた方が、
「職員がやった方が早いから」
と、すべて介助されるようになる。
こうした変化の一つひとつは、安全を考えれば必要なこともあります。
しかし、それまで生活の中で自然に行われていた身体活動が失われていけば、当然、身体を使う機会も減っていきます。
「安全にすること」と「動かなくすること」は違う
転倒予防を考えるとき、特に注意したいのがここです。
転倒した方に対して、
「危ないから歩かせない」
「なるべく座っていてもらう」
「全部職員がやる」
という対応を続ければ、その瞬間の転倒リスクは下げられるかもしれません。
しかし、それによって身体を動かす機会が減れば、筋力や身体機能はさらに低下する可能性があります。
すると、
転倒する
↓
危ないので動く機会を減らす
↓
筋力が低下する
↓
さらに転びやすくなる
↓
もっと動かせなくなる
という循環が生まれてしまいます。
だから転倒予防とは、
「転ばせないために動かさないこと」ではなく「安全に動き続けられる環境をつくること」
でもあるのだと思います。
もちろん、転倒リスクの高い方を無理に歩かせればよいという意味ではありません。
その方の身体機能や認知機能、疾患、服薬状況などを確認しながら、安全に活動できる範囲を考える必要があります。
特別な運動だけがサルコペニア予防ではない
サルコペニアの予防というと、
「筋トレをしましょう」
「毎日運動しましょう」
という話になりがちです。
もちろん運動は大切です。
特に筋肉に抵抗をかけるレジスタンス運動は、サルコペニア対策として重要です。
しかし認知症介護では、必ずしも、
「これから筋力トレーニングをします」
と説明して、決められた運動を毎日行えるとは限りません。
そこで大切になるのが、生活そのものを運動にするという視点です。
生活の中には「運動」がたくさんある
たとえば、
- 自分で椅子から立つ
- 食堂まで歩く
- 洗濯物をたたむ
- テーブルを拭く
- 食器を運ぶ
- 庭に出る
- 家の中を移動する
- トイレまで歩く
- 着替える
- 買い物に行く
- 散歩する
こうした日常生活の動作も、身体活動です。
特に認知症の方の場合、
「運動してください」
では動いてもらえなくても、
「一緒に洗濯物を持っていってもらえますか?」
「ちょっと外を見に行きませんか?」
「お茶を飲みに向こうまで行きましょうか」
という働きかけなら、自然に身体を動かせることがあります。
運動をさせるのではなく、動きたくなる理由をつくる。
これは認知症ケアにおけるサルコペニア予防では、とても大切な考え方ではないでしょうか。
筋肉を守るには「食べること」も必要
もう一つ忘れてはいけないのが栄養です。
どれだけ身体を動かしていても、身体をつくるための栄養が不足していれば、筋肉を維持することは難しくなります。
特に重要なのが、たんぱく質です。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などは、たんぱく質を摂取する代表的な食品です。
しかし高齢者では、
- 食欲が落ちる
- 一度にたくさん食べられない
- 嚥下機能が低下する
- 義歯が合わない
- 食事に集中できない
- 認知症によって食事そのものを認識しづらくなる
など、さまざまな理由から十分な栄養を摂取できなくなることがあります。
単純に、
「もっと食べてもらえばいい」
では解決できないことも多いのです。
その人がなぜ食べられていないのかを考えることも、サルコペニア予防の一部です。
出典:AWGS「Roles of nutrition in muscle health of community-dwelling older adults」
「体重が減っていないから大丈夫」とは限らない
サルコペニアというと、
「痩せている高齢者」
をイメージするかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
筋肉量が減少する一方で体脂肪が増えている場合、体重だけを見ればそれほど減っていなかったり、むしろ増えていたりすることがあります。
いわゆる「サルコペニア肥満」と呼ばれる状態です。
たとえば、
以前より5kg体重が増えた。
これだけを見ると、
「しっかり食べられているから安心」
と思うかもしれません。
しかし、
以前より歩かなくなった。
立ち上がりに時間がかかる。
活動量が減った。
脚が細くなった。
お腹周りは大きくなった。
という変化が同時に起きているのであれば、
「体重は増えたけれど、身体を動かすための筋肉は減っている」
可能性も考える必要があります。
だからこそ高齢者の健康状態は、体重という一つの数字だけでは判断できません。
出典:ESPEN・EASO「Definition and diagnostic criteria for sarcopenic obesity」
関連記事:認知症高齢者が太りやすくなるのはなぜ? ~“食べ過ぎ”だけではない体重増加の原因~
サルコペニアに気づくために見るポイント
サルコペニアを正式に診断するには、医療機関などで筋肉量や筋力、身体機能を適切に評価する必要があります。
介護職や家族が独自に診断するものではありません。
しかし、
「以前と何か違う」
という変化に気づくことはできます。
たとえば、
| 見るポイント | 気になる変化 |
|---|---|
| 立ち上がり | 手を使うようになった、時間がかかる |
| 歩行 | 遅くなった、歩幅が小さくなった |
| 足元 | つまずくことが増えた |
| バランス | 方向転換でふらつく |
| 移動 | 歩くことを嫌がるようになった |
| 疲労 | 少し歩いただけで座りたがる |
| 生活 | 外出や家事をしなくなった |
| 身体 | 腕や脚が以前より細く感じる |
| 食事 | 食事量やたんぱく質摂取量が減っている |
重要なのは、
他の高齢者と比べることではなく、その人自身の以前の状態と比べることです。
「80歳ならこれくらい歩ければ普通」
ではありません。
半年前にはできていたことが、今は難しくなっている。
以前より立ち上がるまでの時間が長くなった。
以前より歩幅が小さくなった。
こうした本人の中での変化を見ることが重要です。
自宅や介護現場でできる簡単な確認
サルコペニアは、見た目だけで判断するものではありません。
AWGS 2019では、サルコペニアの可能性を確認する方法として、ふくらはぎの周囲を測る『下腿周囲長』やSARC-Fなどによるスクリーニングが用いられています。また、筋力では握力、身体機能では歩行速度や5回椅子立ち上がりテストなどが評価に用いられます。
ただし、これらは「一つでも当てはまったらサルコペニア」というものではありません。介護職や家族が診断するのではなく、変化に気づき、必要に応じて医療職やリハビリ専門職に相談するきっかけとして考えることが大切です。
家庭や介護現場では、椅子から立ち上がる様子を見ることも、一つの変化に気づく材料になります。
以前は手を使わず立てていた方が、最近は肘掛けを強く押さなければ立てなくなった。
5回程度の立ち座りが以前より明らかに遅くなった。
こうした変化があれば、下肢筋力や身体機能が低下している可能性があります。
ただし、ここでも数字だけを評価することには注意が必要です。
「○秒だからダメ」
「平均より遅いからもっと頑張らなければならない」
という使い方ではなく、
今の状態を知り、今後の変化を見るための一つの材料
として考える方が、介護では有用だと思います。
痛みや関節疾患、麻痺、心肺機能などによっても結果は変わります。
無理に測定する必要もありません。
出典:AWGS「2019 Consensus Update」
認知症の方では「できない」と「分からない」を分けて考える
さらに認知症の方の場合には、もう一つ注意が必要です。
たとえば、
「椅子から5回立ってください」
と言われても、その指示自体が理解できないことがあります。
これは必ずしも、
身体能力として立ち上がれない
ことを意味しません。
実際の生活では、
「お茶にしましょう」
と言われれば自然に立ち上がれることもあります。
認知症のある方の身体機能を評価するときには、
「検査ができなかった=身体能力がない」
と単純に判断しないことが大切です。
普段の生活の中で、
どのように立っているのか。
どのくらい歩いているのか。
どの場面なら自然に身体を動かせるのか。
こうした日常生活の観察そのものが重要な情報になります。
これは、毎日その方と関わっている家族や介護職だからこそ得られる情報でもあります。
サルコペニアを防ぐためにできること
サルコペニア対策の基本は、大きく分けると、
「身体を動かすこと」と「必要な栄養を摂ること」
です。
運動については、筋力トレーニングだけでなく、歩行などの有酸素運動、バランス運動などを組み合わせることも大切です。
出典:Shenら「Exercise for sarcopenia in older people: A systematic review and network meta-analysis」
ただし、高齢者や認知症のある方の場合には、疾患や身体能力によって安全にできる運動は異なります。
無理に運動量を増やすのではなく、医師や理学療法士などの専門職とも相談しながら、その方に合った方法を考える必要があります。
そして介護の中では、
「運動の時間を増やす」
ことだけでなく、
「身体を使わなくなっている時間を減らす」
という視点も大切なのではないでしょうか。
「やってあげる介護」が筋肉を使う機会を奪うこともある
介護職は、困っている方を見ると手伝いたくなります。
家族も同じでしょう。
しかし、
服を着せる。
物を取ってあげる。
車椅子を押す。
食器を片づける。
すぐに手を差し出して立たせる。
こうした支援の中には、本人がまだ自分でできる動作まで代わりに行ってしまっていることがあります。
もちろん介助が必要な場面では、安全に介助することが最優先です。
しかし、
「できないから介助する」のか、
「時間がかかるから介助している」のか
は、一度考えてみてもよいかもしれません。
本人ができることを本人にしてもらうことは、単なる自立支援ではありません。
立つ。
歩く。
手を伸ばす。
物を持つ。
身体を支える。
その一つひとつが、筋肉を使う機会でもあります。
サルコペニア予防は「筋肉を増やすこと」だけではない
サルコペニアについて調べると、どうしても筋肉量や握力、歩行速度などの数字に目が向きます。
もちろん、それらは大切です。
しかし介護という視点から考えるなら、その先にあるものも忘れたくありません。
自分の足でトイレまで歩ける。
好きな場所まで行ける。
自分で椅子から立てる。
家族と外出できる。
食卓まで歩いていける。
自分の役割を続けられる。
筋肉を維持する目的は、筋肉そのものではありません。
その人が、その人らしい生活をできるだけ長く続けるためです。
だからサルコペニア予防は、単なる「筋トレ」ではなく、
生活を守るための支援
と考えることができます。
転倒を防ぐために、転ばせないだけではなく「動ける身体」を守る
高齢者の転倒を完全になくすことは簡単ではありません。
特に認知症のある方では、本人に
「転ばないように気をつけてください」
と伝えるだけでは難しいこともあります。
だからこそ、
環境を整える。
履物を確認する。
薬の影響を考える。
視力や疾患を確認する。
本人の身体能力を把握する。
こうしたさまざまな視点が必要になります。
そして、その中の一つが筋力や身体機能をできるだけ維持することです。
転倒したから動かさない。
危ないから全部やってあげる。
ではなく、
どうすれば、この人が安全に動き続けられるだろうか。
と考える。
サルコペニアという言葉を知ることは、その視点を持つきっかけになるのではないでしょうか。
まとめ|「最近動かなくなった」を見逃さない
サルコペニアは、高齢期に起こる筋肉量の減少と、筋力・身体機能の低下に関係する状態です。
転倒や骨折、活動能力の低下などとも関係するため、高齢者介護では決して無視できません。
特に認知症のある方では、
認知症などによって外出や活動の機会が減る
↓
身体を動かさなくなる
↓
筋力・身体機能が低下する
↓
転倒のリスクが高まる
↓
安全のためさらに活動を制限する
↓
さらに身体機能が低下する
という循環に注意する必要があります。
だからこそ私たちが見るべきなのは、
「筋肉が何kgあるか」
だけではありません。
「最近、歩かなくなっていないか」
「立ち上がり方が変わっていないか」
「以前できていたことを、周囲が代わりにやるようになっていないか」
「食事量が減っていないか」
「安全を優先するあまり、動く機会まで奪っていないか」
そんな生活の変化です。
そしてもう一つ、大切なことがあります。
高齢者の身体機能を評価する数字は、誰かと競争するための数字ではありません。
その人の「今」を知り、半年後、一年後のその人と比べるための数字です。
歳を取れば、身体は少しずつ変化します。
それでも、
今できていることを、できるだけ長く続ける。
自分で歩ける。
自分で立てる。
自分で生活の中の役割を持てる。
そのために筋肉を守る。
サルコペニア予防とは、単に筋肉を増やす取り組みではなく、
その人のこれからの生活を守る取り組みなのだと思います。
参考文献・出典
- 日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」
― サルコペニアの定義・診断方法・サルコペニア肥満など、基本的な考え方 - EWGSOP2「Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis」
― サルコペニアの定義・評価方法と、加齢・身体活動不足・疾患・栄養などの関連要因 - Yeungら「Sarcopenia and its association with falls and fractures in older adults」
― 高齢者におけるサルコペニアと転倒・骨折との関連について - Cabett Cipolliら「Sarcopenia Is Associated with Cognitive Impairment in Older Adults」
― 高齢者におけるサルコペニアと認知機能低下との関連について - ESPEN・EASO「Definition and diagnostic criteria for sarcopenic obesity」
― サルコペニア肥満の定義や、筋肉量・筋機能の低下と体脂肪増加が併存する状態について - AWGS「Roles of nutrition in muscle health of community-dwelling older adults」
― 高齢者の筋肉の維持と、たんぱく質をはじめとする栄養との関係について - AWGS「2019 Consensus Update」
― アジア人高齢者におけるサルコペニアの評価基準や、握力・歩行速度・5回椅子立ち上がり・下腿周囲長などの評価方法 - Shenら「Exercise for sarcopenia in older people: A systematic review and network meta-analysis」
― サルコペニアのある高齢者に対するレジスタンス運動や、有酸素運動・バランス運動を組み合わせた運動介入の効果について
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
関連記事

コメント