若年性認知症とは? ~高齢者の認知症との違い、本人や家族に起きることをわかりやすく解説~

認知症について
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※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。

ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。

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📝 この記事の要約

【この記事で伝えたいこと】

若年性認知症は、高齢者だけではなく、仕事や子育てなど人生の大切な時期を過ごしている世代にも起こり得る認知症です。
この記事では、若年性認知症の特徴や気付きにくい理由、本人や家族が抱える困りごとを通して「困った人」ではなく「困っている人」として理解するための視点を解説します。


【要点】

  1. 若年性認知症が見つかりにくい理由が分かる
    「認知症は高齢者の病気」という思い込みが、診断の遅れや周囲の誤解につながる理由について解説します。
  2. 本人や家族が抱える苦しさを具体的に理解できる
    仕事や子育て、家庭生活の中で起こる変化や、本人が感じている不安、家族が直面する現実について具体例を交えながら紹介します。
  3. 認知症の方を理解するために大切な視点が分かる
    「困った人」ではなく「困っている人」として捉える考え方や、早期受診・相談につなげる重要性について解説します。

【この記事で分かること】

・若年性認知症の特徴と、高齢者の認知症との違い
・本人が感じている不安や、家族に起こりやすい変化
・「困った人」ではなく「困っている人」として理解するための視点

若年性認知症を症状だけでなく、その人の暮らしや気持ちまで含めて理解するための内容です。

※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。

はじめに

「認知症」と聞くと、多くの方は80代や90代の高齢者を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、認知症は高齢者だけの病気ではありません。

40代や50代、時には30代で発症することもあり、このように65歳未満で発症する認知症若年性認知症と呼びます。

若年性認知症の方は、まだ仕事をしていたり、子育てをしていたり、住宅ローンを返済していたりと、人生の大切な時期を過ごしています。

そのため、高齢になってから認知症を発症する場合とは異なる、多くの困難に直面します。

さらに「まだ若いのだから認知症ではないだろう」という思い込みによって発見が遅れやすく、本人も家族も原因が分からないまま苦しみ続けてしまうことも少なくありません。

この記事では、若年性認知症とはどのような病気なのか、その特徴や周囲との認識のズレについて解説します。

若年性認知症とは?

若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症の総称です。

「若年性認知症」という一つの病気があるわけではありません。

高齢者の認知症と同じように、

  • アルツハイマー型認知症
  • 前頭側頭型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症

など、さまざまな種類の認知症が若い年代で発症した状態を指します。

つまり、病気そのものは高齢者の認知症と大きく変わりません。

違うのは「発症した年齢」と、それによって生じる生活上の影響です。

「若いから認知症ではない」という思い込み

若年性認知症が見つかりにくい最大の理由は、

「認知症は高齢者の病気」というイメージが社会に根付いていることです。

例えば、高齢者が

  • 物忘れが増える
  • 同じ話を何度もする
  • 道に迷う
  • 約束を忘れる

といった症状を示すと「認知症かもしれない」と考える方は少なくありません。

一方で40代や50代の方が同じような症状を示した場合、多くは

  • 疲れているだけ
  • ストレスが溜まっている
  • 更年期の影響
  • 仕事が忙しいから
  • 気のせいではないか

などと考えられます。

もちろん、こうした原因で物忘れが起こることもあります。

しかし、その結果として認知症という可能性が後回しになり、受診が遅れてしまうことがあるのです。

「仕事ができなくなった」が最初のサインになることも

若年性認知症では、家庭よりも先に仕事で変化が現れることがあります。

例えば、

  • 以前なら簡単にできていた仕事でミスが増える
  • 同じ確認を何度も繰り返す
  • 書類の作成に時間がかかる
  • 段取りが立てられない
  • 会議の内容を忘れてしまう
  • 約束を間違える

などです。

こうした変化は本人にも自覚があることが少なくありません。

「最近、何かおかしい」

「前のように仕事ができない」

「どうしてこんな簡単なことを間違えるんだろう」

本人は必死に取り戻そうと努力します。

しかし、努力しても以前のようにはできません。

そのため、さらに焦りや不安が強くなっていきます。

周囲は「やる気がない」と誤解してしまうことも

一方で周囲は、その変化を認知症とは考えず、

「集中力が落ちたのかな」

「最近、やる気がないな」

「年齢のせいでは?」

と受け止めることがあります。

場合によっては、

「もっと頑張ればできる」

「気を付ければいいだけ」

と言われてしまうこともあります。

しかし本人は、頑張っていないわけではありません。

むしろ、誰よりも「元の自分に戻りたい」と思っています。

できないことを責められることは、

「できない自分」を突き付けられることでもあります。

だからこそ、本人はさらに自信を失い、失敗を隠そうとしたり、仕事を避けたりするようになることがあります。

本人は「できなくなっている自分」を理解していることも多い

高齢で発症する認知症では、自分の変化に気付きにくい場合もあります。

一方で若年性認知症では、初期の段階では本人が異変を自覚していることも少なくありません。

「前ならできたのに」

「何で思い出せないんだろう」

「自分がおかしくなってしまった」

そうした思いを抱えながら毎日を過ごしている方もいます。

つまり、本人は困っていないのではなく、

「困っていることを誰にも理解してもらえない」という苦しさを抱えていることがあるのです。

病気は、何気ない日常から始まる

部長として何十人もの部下をまとめてきた人が、会議で資料の順番が分からなくなり、
『今日は調子が悪いだけだ』と自分に言い聞かせながら帰宅する。

子どもの学校行事の日付を何度確認しても覚えられず、
『母親失格だ』と一人で涙を流す。

若年性認知症とはこのように、
「周囲に気付かれにくい小さな異変」と
「本人が感じている苦しさ」から始まることもあります。

だからこそ、本人の「何かおかしい」という小さな声に耳を傾けることが、

早期の気付きにつながる大切な一歩となります。

「まだ若いのに」という言葉が本人を傷つけることもある

若年性認知症の方に対して、

「まだ若いのに」

という言葉を掛ける方は少なくありません。

もちろん悪気はありません。

励ましたい気持ちや驚きから出る言葉でしょう。

しかし、本人からすると、この言葉は必ずしも励ましにはなりません。

なぜなら、一番「まだ若いのに」と思っているのは本人だからです。

「まだ働きたい」

「子どもの成長を見守りたい」

「家族を支えたい」

「普通の生活を送りたい」

そんな思いを抱えている中で、
「まだ若いのに」という言葉は、現実を改めて突き付けられるように感じてしまうことがあります。

だからこそ大切なのは、

「なぜこんなことになったのだろう」と問い掛けることではなく、

「どのようなことで困っているのだろう」と本人の気持ちに目を向けることです。

認知症は「高齢者だけの病気」ではありません

若年性認知症について知ることは、

「若い人にも認知症がある」という知識を得るだけではありません。

認知症は年齢だけでは判断できないこと。

そして、本人の変化を「怠け」や「努力不足」と決めつけないことにもつながります。

「まだ若いから大丈夫」と決めつけず、小さな変化にも目を向けることが大切なのです。

家族にも大きな影響が及ぶ病気

若年性認知症は、本人だけの病気ではありません。

家族の生活にも大きな影響を与えます。

高齢者が認知症を発症する頃には、すでに退職していたり、子どもが独立していたりする家庭も少なくありません。

一方、若年性認知症では、

  • 子どもがまだ学生である
  • 住宅ローンが残っている
  • 家族の生活費を支えている
  • 親の介護も重なっている

など、現役世代ならではの課題や事情が重なりやすいという特徴があります。

そのため、認知症の症状だけではなく、仕事や経済的な問題、子育てなど、多くの課題が同時に押し寄せることがあります。

「家族だから分かる」とは限らない

家族は毎日一緒に生活しているからこそ、小さな変化に気付きにくいことがあります。

例えば、

「最近少し疲れているのかな」

「年齢のせいで忘れっぽくなっただけかな」

「仕事のストレスが大きいのだろう」

と思ってしまうことがあります。

また、本人も失敗を隠そうとするため、家族が異変に気付く頃には症状が進行しているケースもあります。

そして、原因が分からないまま夫婦喧嘩が増えたり、
「どうしてそんなこともできないの?」という言葉が増えてしまったりすることもあります。

後から振り返ると、
「あれが最初の症状だったのかもしれない」と気付くことも少なくありません。

性格が変わったように見えることもある

若年性認知症では「性格が変わった」と感じられることがあります。

例えば、

  • 怒りっぽくなった
  • 無関心になった
  • 身だしなみに気を遣わなくなった
  • 約束を守れなくなった
  • 空気を読まない発言が増えた

こうした変化は、認知症の種類によって現れる症状の一つである場合があります。

前頭側頭型認知症では特に誤解されやすい

特に前頭側頭型認知症では、社会性や感情のコントロールに関わる脳の働きが低下するため、周囲から見ると「性格が変わった」と感じることがあります。

このタイプでは、

  • 同じ行動を繰り返す
  • 配慮が減る
  • 社会的なルールに沿った行動が難しくなる
  • 感情をコントロールしにくくなる

などが、全ての方にではありませんが、起きることがあります。

ですが周囲からは、

  • 性格が悪くなった
  • わがまま
  • 非常識

と、誤解されてしまうことがあります。

しかし、本人が意図的にそうしているわけではありません。

「わがままになった」「人が変わってしまった」と決めつけるのではなく、

「病気の影響かもしれない」という視点を持つことが大切です。

若年性認知症は“孤立”しやすい

若年性認知症では、同じような年代で認知症を経験している人と出会う機会が少なく、孤立につながることがあります。

  • 周囲に理解者がいない
  • 相談先が分からない
  • 同年代の事例が少ない
  • 社会制度に繋がりにくい

こうした孤立感も、
若年性認知症の大きな課題です。

若年性認知症では、高齢者向けの認知症支援だけでは生活上の悩みが十分に解決できないこともあります。

仕事や子育て、経済的な問題など、
同世代だからこその悩みを共有できる場所につながることも大切です。

「困った人」ではなく「困っている人」

認知症について考えるとき、私たちはつい「困った行動」に目を向けてしまいます。

しかし、本当に目を向けるべきなのは、その行動の背景です。

例えば、

仕事で同じ失敗を繰り返す人。

約束を忘れてしまう人。

イライラしやすくなった人。

周囲からは「困った人」と見えてしまうかもしれません。

ですが、その人自身は、

「なぜできないのか分からない」

「迷惑を掛けてしまった」

「前のようにできない」

と、誰よりも苦しんでいることがあります。

「ちゃんとして」
「前はできてたでしょ」
「なんで忘れるの?」

こうした言葉は、本人にとって「できなくなった自分」をさらに突き付けられる言葉になることがあります。

必要なのは、責めることではありません。

認知症ケアで大切なことは、

「なぜこんなことをするのか」ではなく、
「何に困っているのか」と考えることです。

「困った人」ではなく、
「困っている人」として見る。

この視点は、若年性認知症でも、高齢者の認知症でも変わりません。

早く気付くことには大きな意味がある

若年性認知症は、早期に診断を受けることで得られるメリットが少なくありません。

例えば、

  • 症状に応じた治療や支援を早く始められる
  • 今後の生活について家族と話し合う時間が持てる
  • 利用できる制度や相談先につながりやすくなる
  • 本人の希望を確認しながら将来を考えられる

といったことが挙げられます。

また近年では、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度の認知症を対象に、病気の進行を抑制することを目的とした新しい治療薬(レカネマブ、ドナネマブ)も登場しており、早期に診断・治療につなげることの意義は以前より大きくなっています。

一方で、これらの治療薬はすべての認知症の方が対象となるわけではありません。病気の種類や進行状況などを総合的に判断したうえで、専門的な医療機関で適応が検討されます。

もちろん、物忘れがあれば必ず若年性認知症というわけではありません。

ストレスや睡眠不足、うつ病、甲状腺の病気など、認知症以外にもさまざまな原因が考えられます。

だからこそ「様子を見よう」と一人で抱え込むのではなく、

気になる変化が続く場合には
もの忘れ外来や認知症疾患医療センターなど、
認知症を専門的に診療する医療機関へ相談することが大切です。

※レカネマブ、ドナネマブの対象や適正使用については、厚生労働省および医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公表資料を参考にしています。

若年性認知症になっても、その人らしさは失われない

認知症と診断されると「人生が終わってしまった」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、認知症になったからといって、その人の人生や価値まで失われるわけではありません。

好きなこと。

大切な人。

長年培ってきた経験。

その人らしい考え方。

そうしたものは、認知症になったからといって突然なくなるものではありません。

もちろん、病気が進行すればできなくなることは増えていきます。

ですが「できなくなったこと」だけを見るのではなく、
「今できること」や「その人らしさ」に目を向けることが、本人の安心や尊厳につながります。

認知症ケアとは、失った能力だけを見ることではありません。

その人が今も大切にしている思いや、これまで歩んできた人生を理解しながら関わることが、何より大切なのです。

まとめ

若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症の総称です。

高齢者の認知症と病気そのものは大きく変わりませんが、働き盛りや子育て世代で発症するため、仕事や家庭、経済面などに大きな影響を及ぼします。

また「認知症は高齢者の病気」という思い込みから発見が遅れたり、
周囲から「やる気がない」「性格が変わった」と誤解されたりすることも少なくありません。

しかし、その背景には病気による脳の変化があり、本人は誰よりも戸惑いや不安を感じています。

だからこそ大切なのは、
「なぜこんなことをするのだろう」と考えるのではなく、
「何に困っているのだろう」と考えることです。

若年性認知症を正しく理解することは、認知症そのものへの理解を深める第一歩でもあります。

そして、その理解が、本人や家族が安心して生活できる社会につながっていくのではないでしょうか。

参考文献・参考資料

本記事は、以下の公的機関・学会等が公開している資料を参考に作成しています。

・厚生労働省「若年性認知症ハンドブック」
・厚生労働省「若年性認知症実態調査結果概要」
・医薬品医療機器総合機構(PMDA)「レカネマブ(レケンビ)最適使用推進ガイドライン」
・医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ドナネマブ(ケサンラ)最適使用推進ガイドライン」
・認知症介護情報ネットワーク「若年性認知症について」

※本文中で紹介している内容は、記事公開時点の情報に基づいています。

ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。

詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!

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