若年性認知症になると、本人と家族に何が起きるのか? ~仕事・お金・子育て・夫婦関係など、診断後に直面しやすい問題を考える~

認知症について
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※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。

ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。

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📝 この記事の要約

【この記事で伝えたいこと】

若年性認知症は、認知機能の低下だけではなく、仕事や収入、夫婦関係、子育てなど、本人と家族の「生活全体」に影響することがあります。
この記事では、若年性認知症によって本人と家族に起こり得る変化や、生活を支えていくために大切な視点について解説します。


【要点】

  1. 若年性認知症が「生活全体」に影響する理由が分かる
    仕事や収入、住宅ローン、子育てなど、社会生活の中心にいる年代だからこそ起こりやすい問題について解説します。
  2. 本人だけでなく、家族にもさまざまな変化が起こることが分かる
    夫婦関係や子どもへの影響、ダブルケア、家族の負担や孤立など、若年性認知症によって家庭全体に起こり得る変化を紹介します。
  3. 本人と家族の生活を支えるために大切な視点が分かる
    「認知症になった=すべてできなくなる」と考えず、今できることを大切にしながら、家族だけで抱え込まず早い段階から支援につながることの重要性を解説します。

【この記事で分かること】

・若年性認知症が仕事や収入など、生活にどのような影響を与えるのか
・夫婦関係や子育てなど、家族に起こり得る変化や負担
・本人と家族の生活を守るために、早い段階から考えておきたいこと

若年性認知症を「本人だけの病気」として捉えるのではなく、本人と家族の生活全体を支えていくために必要な視点が分かる内容です。

※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。

はじめに

若年性認知症について考えるとき、どうしても「どのような症状が出るのか」ということに目が向きがちです。

・物忘れが増える
・仕事でミスが増える
・今までできていたことが難しくなる
・判断や段取りがうまくできなくなる

もちろん、こうした認知症そのものの症状を知ることは大切です。

しかし、若年性認知症によって起きる問題は、それだけではありません。

65歳未満という年代は、多くの人にとってまだ社会生活の中心にいる時期です。

仕事をしている人もいます。

住宅ローンを返している人もいます。

子どもを育てている人もいれば、子どもの進学を控えている家庭もあるでしょう。

家庭の収入の中心を担っている場合もあれば、自分の親の介護をしている場合もあります。

つまり若年性認知症は、

「認知機能が低下する」という問題だけではなく、それまで築いてきた生活全体に影響する可能性があるのです。

そしてその影響を受けるのは、本人だけとは限りません。

配偶者、子ども、親など、家族の生活も大きく変化することがあります。

この記事では、若年性認知症によって本人と家族にどのような変化が起こり得るのかを、仕事・経済面・家庭・子育て・夫婦関係・社会とのつながりなどから考えていきます。

若年性認知症の難しさは「生活の途中」で起こること

認知症というと、高齢になってから発症する病気というイメージを持つ人も多いと思います。

しかし、若年性認知症は65歳未満で発症する認知症です

そのため、発症した時点でもさまざまな社会的役割を担っている可能性があります。

たとえば、

・会社員として働いている
・管理職として部下を抱えている
・自営業を営んでいる
・家計を支えている
・家事や育児を担っている
・子どもの進学を支えている
・住宅ローンを返済している
・親の介護をしている

といったことです。

認知症になったからといって、これらの役割が突然なくなるわけではありません。

しかし認知症の症状によって、今までと同じように役割を果たすことが難しくなることがあります。

そこに、若年性認知症特有の難しさがあります。

若年性認知症では、病気そのものへの対応だけではなく、

「これまでの生活を、これからどう組み直していくのか」

という問題にも向き合うことになります。

最初に大きな問題になりやすい「仕事」

若年性認知症で、特に大きな影響を受けやすいものの一つが仕事です。

認知症の初期には、必ずしも明らかな物忘れから始まるとは限りません。

仕事の段取りがうまくできなくなったり、同じミスを繰り返したり、予定を忘れたり、複数の仕事を同時に進めることが難しくなったりすることがあります。

それまで問題なくできていた仕事が、少しずつできなくなっていくのです。

ところが、この段階では本人も周囲も認知症とは考えないことがあります。

「最近集中力が落ちている」

「疲れているのではないか」

「年齢のせいだろう」

と考えられることもあります。

場合によっては、

「仕事が雑になった」

「やる気がない」

「確認不足が多い」

と評価されてしまうこともあるでしょう。

本人自身も、

「なぜ今までできていたことができないのだろう」

と戸惑うことがあります。

努力してもミスが減らない。

注意されることが増える。

自信を失っていく。

こうした状態が続いた末に受診し、若年性認知症と診断されるケースもあります。

つまり診断を受けるまでに、

すでに仕事上の評価や人間関係、自信などが傷ついている場合もあるのです。

診断されたからといって、すぐに「仕事を辞める」とは限らない

若年性認知症と診断されると、

「もう働けないのではないか」

と考えてしまう人もいるかもしれません。

しかし、認知症の状態や仕事内容は一人ひとり異なります。

診断されたという理由だけで、すべての人がすぐに仕事を続けられなくなるわけではありません。

・仕事内容を調整する
・複雑な業務を減らす
・勤務時間を変更する
・周囲の確認を受けながら仕事をする
・配置を変更する

こうした工夫によって、仕事を続けられる可能性もあります。

仕事は「収入を得るため」だけではない

仕事をする意味は、収入を得ることだけではありません。

社会とのつながりや、自分の役割、生活リズム、自信などにも関係しています。

だからこそ、

「認知症になった=退職」

と考えるのではなく、本人の状態と職場の状況を踏まえて、どのような働き方ができるのかを考えることが大切です。

一方で、業務内容や症状によっては、安全面などから仕事を続けることが難しくなる場合もあります。

重要なのは「働くか、辞めるか」の二択だけで考えないことです。

仕事の問題は、そのまま「お金の問題」につながる

仕事を続けることが難しくなれば、次に大きな問題となるのが収入です。

若年性認知症を発症する年代では、まだ多くの生活費が必要になることがあります。

住宅ローン。

家賃。

子どもの教育費。

日々の生活費。

保険料。

医療費。

車の維持費。

そして、これから必要になる介護や支援にかかる費用。

こうした支出が続いている中で、本人の収入が減少したり、なくなったりする可能性があります。

特に本人が家計の中心を担っていた場合、その影響は非常に大きくなります。

さらに、家族が本人を支えるために勤務時間を減らしたり、仕事を変えたりすることで、家族側の収入まで減ってしまうことがあります。

つまり、

本人の収入減少と、介護する家族の収入減少が同時に起こる可能性がある

ということです。

若年性認知症を考えるうえでは、この経済的な問題を切り離すことはできません。

だからこそ、診断後は病気の治療だけではなく、利用できる社会保障制度や支援制度について早い段階から情報を集めることも重要になります。

「夫婦の関係」も変化していくことがある

若年性認知症は、夫婦関係にも影響を与えることがあります。

それまで夫婦として一緒に生活してきた関係に、

「支える人」と「支えられる人」

という関係が加わることがあるからです。

たとえば、これまで夫婦で相談して決めていたことを、配偶者が中心となって判断しなければならなくなるかもしれません。

本人が担当していた家事や手続き、お金の管理などを、配偶者が担うようになることもあります。

さらに、

仕事。

家事。

育児。

本人の通院。

さまざまな手続き。

将来への不安。

これらが一人の配偶者に集中することもあります。

もちろん、家族だから支えたいという気持ちもあるでしょう。

しかし、

「家族だからできて当然」

「夫婦なのだから支えて当然」

と考えてしまうことには注意が必要です。

支える家族にも生活があります。

仕事があります。

体調があります。

感情があります。

介護を続けるためには、本人への支援だけではなく、支える家族への支援も必要なのです。

子どもがいる家庭では、さらに複雑な問題が起こる

若年性認知症では、まだ子どもが未成年という家庭もあります。

小学生や中学生、高校生の子どもがいることもあるでしょう。

この場合、子ども自身も大きな変化の中に置かれることになります。

「最近、お父さんが同じことを何度も聞く」

「お母さんが今までできていたことを忘れる」

「怒りっぽくなった」

「仕事に行かなくなった」

子どもから見れば、親に何が起きているのか分からないことがあります。

病気について説明されていなければ、

「自分が何か悪いことをしたのではないか」

「どうして前と違うのだろう」

と悩む可能性もあります。

一方で、年齢によっては「認知症」という病気を理解すること自体が難しいこともあります。

だからといって、すべてを隠せばよいとも限りません。

子どもの年齢や理解力に合わせて、

「あなたのせいではないこと」

「お父さん・お母さんには病気による変化が起きていること」

「困ったときには相談してよいこと」

などを伝えることも大切です。

子どもが「介護者」になってしまうこともある

もう一つ注意したいのが、子どもが親の介護や家事を過度に担う状態です。

親の病気をきっかけに、

食事を作る。

掃除をする。

きょうだいの世話をする。

親を見守る。

外出に付き添う。

感情的な支えになる。

といった役割を子どもが担うことがあります。

家族の一員として手伝うこと自体が問題なのではありません。

しかし、その負担によって、

学校生活。

友人関係。

部活動。

勉強。

進路。

睡眠や休息。

などに大きな影響が出ているのであれば、子ども自身への支援も必要です。

若年性認知症では、

「認知症になった本人を誰が支えるのか」だけではなく、

「その家庭で誰に負担が集中しているのか」を見ることが重要です。

親の介護と自分の家庭が重なる「ダブルケア」も

発症する年代によっては、自分の親も高齢になっていることがあります。

つまり、

子どもを育てながら、

若年性認知症になった配偶者を支え、

さらに高齢の親の介護もする。

という状況が起こる可能性があります。

いわゆるダブルケア、あるいは複数のケアが重なる状態です。

一つひとつなら何とか対応できることでも、
複数の問題が同時に重なれば、家族の負担は急激に大きくなります。

このような状況では、

「家族で何とかしよう」

と抱え込むことが、必ずしも最善とは限りません。

本人だけではなく、その家族全体を一つの生活単位として考え、必要な支援につなげていく視点が必要になります。

友人や地域との関係が少しずつ薄れてしまうこともある

若年性認知症は、社会とのつながりにも影響します。

仕事を辞める。

車の運転をやめる。

一人で外出する機会が減る。

趣味の集まりに参加しなくなる。

友人と会うことが減る。

こうした変化が重なることで、本人の生活範囲が狭くなることがあります。

家族側も同じです。

本人を一人にすることへの不安から外出を控えたり、友人との付き合いを減らしたりすることがあります。

さらに、

「若いのに認知症だと知られたくない」

という思いから、周囲との関係を避けてしまうこともあるかもしれません。

その結果、本人と家族が社会から孤立してしまう可能性があります。

しかし、認知症になったからといって、

それまでの人間関係や趣味、社会とのつながりをすべて失う必要があるわけではありません。

できなくなったことだけを見るのではなく、

今できることを続けられる環境を作る

という視点も重要です。

家族にもさまざまな感情が生まれる

若年性認知症と診断されたとき、戸惑うのは本人だけではありません。

家族にもさまざまな感情が生まれます。

「どうしてこの年齢で」

「これからどうなるのだろう」

「仕事はどうするのか」

「子どもにはどう説明すればいいのか」

「生活費はどうなるのか」

「自分が介護するしかないのか」

不安、悲しみ、怒り、戸惑い。

さまざまな感情が入り混じることがあります。

ときには、

「もっと早く気づけばよかった」

「仕事のミスを責めてしまった」

「怠けていると思ってしまった」

と自分を責める家族もいるかもしれません。

しかし診断前の段階で、家族が認知症だと判断することは簡単ではありません。

若年性認知症では、仕事のストレスや疲労、うつ状態など、ほかの原因と思われることもあります。

大切なのは、過去の対応だけを振り返り続けることではなく、

「これからの生活をどう作っていくのか」

を考えていくことです。

早い段階から支援につながることが大切

若年性認知症では、本人の年齢が若いことで、

「まだ介護サービスを使うような年齢ではない」

と感じてしまうことがあります。

周囲にも同年代の介護経験者が少なく、相談できる人が見つからないこともあります。

しかし、若年性認知症には利用できる相談窓口や制度があります。

医療機関だけではなく、

仕事に関する支援。

経済的な支援。

障害福祉に関する制度。

介護保険。

地域の相談窓口。

若年性認知症に関する専門的な相談。

本人や家族の交流の場。

など、状況によってさまざまな支援を検討することができます。

重要なのは、

困り切ってから初めて相談するのではなく、これから困る可能性があることも含めて早めに相談することです。

「まだ何とかできているから」

という段階だからこそ、今後に備えることが重要になってくるのです。

本人だけを見るのではなく「家族全体」を見る

若年性認知症では、本人への支援だけを考えていると、家庭の中で起きている問題を見落としてしまうことがあります。

本人は安全に生活できている。

病院にも通えている。

薬も飲めている。

一見すると問題がないように見えるかもしれません。

しかし、その生活を維持するために、

配偶者が仕事を減らしているかもしれません。

子どもが家事を担っているかもしれません。

家計が苦しくなっているかもしれません。

家族がほとんど外出できなくなっているかもしれません。

本人への支援が成立している背景で、家族の誰かが限界まで頑張っているのであれば、

それは安定した生活とは言い切れません。

だからこそ若年性認知症では、

「本人に何が必要なのか」と同時に、「家族に何が必要なのか」を考えること

が大切です。

診断後に必要なのは「全部を一度に解決すること」ではない

若年性認知症と診断されると、
考えなければならないことが一気に増えたように感じるかもしれません。

仕事。

収入。

家族。

子ども。

住まい。

運転。

医療。

介護。

将来。

これらを一度に考えれば、不安が大きくなるのは当然です。

しかし、すべてをその日に決める必要はありません。

まず何に困っているのか。

近いうちに何が問題になりそうなのか。

今のうちに確認しておいた方がよいことは何か。

一つずつ整理していくことが大切です。

たとえば仕事を続けられるのであれば、すぐに退職を決める必要はないかもしれません。

家事ができるのであれば、すべてを家族が代わる必要もありません。

まだ本人が自分の希望を十分に伝えられる段階であれば、これからの生活について一緒に考えることもできます。

認知症になったからといって、

「できることまで先回りして奪わないこと」

も大切です。

「できなくなること」だけが、その人のすべてではない

認知症の原因となる病気の多くは進行性であり、時間とともに支援が必要なことが増えていく場合があります。

そのため家族は、どうしても

「次は何ができなくなるのだろう」

という不安を抱きやすくなります。

もちろん、将来に備えることは必要です。

しかし、将来の不安だけを見続けてしまうと、今の本人ができていることまで見えなくなってしまうことがあります。

仕事は難しくなったけれど、家事の一部はできる。

以前と同じようにはできなくても、趣味は楽しめる。

一人で遠くへ行くことは難しくても、家族と一緒なら外出できる。

言葉が出にくくなっても、気持ちや好みがすべてなくなるわけではありません。

認知症の診断は、その人の人生がその日で終わるという意味ではありません。

「何ができなくなったか」だけではなく、
「今何ができるのか」を考えること。

これは若年性認知症になった本人の生活を考えるうえでも、大切な視点です。

まとめ|若年性認知症は「本人だけの病気」ではない

若年性認知症では、認知機能の低下だけではなく、
その人がそれまで築いてきた生活のさまざまな部分に影響が広がることがあります。

仕事を続けられるのか。

収入はどうなるのか。

住宅ローンや教育費はどうするのか。

子どもにどう伝えるのか。

配偶者は仕事と介護を両立できるのか。

親の介護まで重なっていないか。

社会とのつながりをどう維持するのか。

こうした問題は、それぞれが独立しているわけではありません。

仕事を辞めることで収入が減り、家計が変わる。

本人を支えるために配偶者が仕事を減らし、さらに収入が減る。

家族の負担が増え、子どもが家事を担うようになる。

外出が減り、本人も家族も社会とのつながりが薄くなる。

一つの変化が、次の変化につながっていくことがあります。

だからこそ若年性認知症では、

病気だけを見るのではなく、その人と家族の「生活全体」を見ることが重要です。

家族だけですべてを背負う必要はない

若年性認知症によって起こるさまざまな問題を、
家族だけで解決しようとする必要はありません。

仕事、お金、医療、介護、福祉、子育て。

問題によって、利用できる制度や相談できる専門職は異なります。

大切なのは、問題が深刻になってから初めて支援を探すのではなく、

「これから何が起こる可能性があるのか」を知り、早い段階から準備しておくことです。

では実際に若年性認知症と診断された場合、どのような制度を利用でき、どこに相談すればよいのでしょうか。

次の記事では、若年性認知症の本人と家族が利用できる制度や支援、相談先について整理していきます。

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