介護職のためのセルフアファーメーション入門 ~自分を責めすぎないための考え方~

職員教育・自己成長
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※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。

ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。

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📝 この記事の要約

【この記事で伝えたいこと】

セルフアファーメーションとは「自分が大切にしている価値観」に立ち返り、自分を支える考え方です。
この記事では、介護職が自分を責めすぎてしまう背景や、セルフコンパッションとの違い、現場での活かし方について解説します。


【要点】

  1. セルフアファーメーションとは何かが分かる
    「自分が大切にしている価値観」に立ち返り、自分を支える考え方について解説します。
  2. 介護職が自分を責めすぎてしまう理由が分かる
    責任感の強さが、自己否定や燃え尽き、防御的ケアにつながる背景を整理します。
  3. セルフコンパッションやマインドフルネスとの違いと、介護現場での活かし方が分かる
    「軸を支える」「心を回復する」「自分の状態に気づく」というそれぞれの役割を、現場の視点から分かりやすく解説します。

【この記事で分かること】

・セルフアファーメーションとは何か
・セルフコンパッションやポジティブアファーメーションとの違い
・介護職が自分を責めすぎてしまう理由
・セルフアファーメーションを介護現場で活かす視点

自分を支えることが、良いケアにつながる理由を分かりやすく解説します。

※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。

はじめに

介護の仕事は、とてもやりがいのある仕事です。
その一方で、思い通りにいかないことも多く、心の負担が大きい仕事でもあります。

・転倒事故が起きてしまった
・利用者への声掛けがうまくいかなかった
・ご家族から厳しい言葉を受けた
・忙しさの中で丁寧に関われなかったと感じた

こうした出来事に直面したとき、多くの介護職員はこう考えます。

「自分の関わりが悪かったのではないか」
「もっとできたのではないか」
「自分は向いていないのではないか」

この姿勢は、専門職としてとても大切です。

しかし同時に、自分を責めすぎてしまう構造にもつながっています。

優しさや責任感が強い人ほど、自分に厳しくなりすぎてしまう。
その結果、心が疲れ、余裕を失い、ケアにも影響が出てしまう。

そんな時に必要なのが、

セルフアファーメーション

という考え方です。

これは「自分を甘やかす技術」ではありません。

むしろ、専門職として長く良いケアを続けるための“心の土台”となるものです。

セルフアファーメーションとは何か

セルフアファーメーション(Self-affirmation)とは、

👉 自分が大切にしている価値や信念を再確認し、自分の存在価値を支える方法

です。

人は「出来事」と「自分の価値」を結びつけてしまう

人は失敗や批判に直面すると、

「自分はダメだ」
「自分には価値がない」

と、出来事と自分の価値を結びつけてしまいます。

しかし本来、

起きてしまった出来事と人格は別のものです。

例えば、

・事故が起きた → その出来事
・自分はダメな職員 → 自己評価

この二つは、本来切り離して考える必要があります。

セルフアファーメーションは「自分の軸」に立ち返る考え方

セルフアファーメーションは、そのために

👉 「自分は何を大切にしている人間か」

に立ち返ります。

例えば

・利用者の尊厳を守ることを大切にしている
・丁寧な関わりを意識している
・チームで支え合うことを大事にしている

こうした価値観を思い出すことで、自分の軸を取り戻すのです。

※セルフアファーメーションは「自分を無条件に高く評価する」というよりも「自分が大切にしている価値観に立ち返る」という考え方です。

なぜ介護職に必要なのか

介護の現場では、

👉 結果がコントロールしきれない

という特徴があります。

どれだけ丁寧に関わっても、

・転倒
・誤嚥
・BPSD
・拒否

といった出来事は起こり得ます。

それにもかかわらず、

「もっとできたのではないか」

と自分を責めてしまう。

これは、責任感の強さの裏返しでもあります。

自分を責め続けることが、心とケアを追い詰める

しかし、この状態が続くと

・自己否定
・燃え尽き
・防御的ケア

につながってしまいます。

特に、失敗を過度に恐れるようになると、

・挑戦を避ける
・本人の意思より「安全」を優先しすぎる
・「事故を起こさないこと」そのものが目的になる

といった、防御的ケアにつながることがあります。

「失敗しないこと」が目的になると、ケアの本質が揺らぐ

もちろん安全は大切です。

しかし、

「本人らしい生活」よりも「失敗しないこと」

だけが優先されるようになると、ケアの本質から離れてしまうことがあります。

その背景には
「失敗=自分の価値がない」という思考が隠れていることがあります。

事故や失敗は「出来事」であり、その人の価値を揺るがすものではありません。

しかし介護職は、責任感が強いからこそ、
ネガティブな出来事を“自己否定”へ結びつけてしまいやすいのです。

だからこそ必要なのが、セルフアファーメーションという考え方です。

セルフアファーメーションは、

👉 責任感を持ちながらも、自分を潰さないための考え方

ともいえるのです。

ポジティブアファーメーションとの違い

ここでよく混同されるのが

ポジティブアファーメーションです。

例えば

「私はできる」
「私は優れている」

といった言葉を繰り返す方法です。

これも一定の効果はありますが、

セルフアファーメーションとは少し違います。

違いは“根拠”があるかどうかです。

セルフアファーメーションは「根拠のある自己肯定」

セルフアファーメーションは

・自分の価値観
・これまでの行動
・実際の経験

に基づいています。

一方でポジティブアファーメーションは、

👉 根拠が曖昧なまま前向きな言葉を使う

ことが多いです。

そのため、状態によっては

「そんなはずない」と逆に違和感が生まれることもあります。

セルフアファーメーションは、

👉 現実や実績に根ざした自己肯定

である点が大きな違いです。

セルフコンパッションとの違い

もう一つ関連する考え方が

セルフコンパッション(自分への思いやり)です。

セルフコンパッションは、

👉 失敗や苦しみを抱えた自分を優しく受け止める態度です。

ここで、それぞれの違いを整理してみましょう。


🔹セルフアファーメーション(自己肯定)

軸:
自分の価値観や強みを思い出し、肯定する。

ねらい:
自分の「核となる価値」を再確認し、不安やストレスから心を守る。

例えば、

  • 「私は誠実さを大切にしている」
  • 「困難に直面しても努力を続けてきた」

など、自分が大切にしている価値観に立ち返ります。

特徴:
失敗や批判を受けても「自分が何を大切にしている人間か」を再確認することで、自分の軸を保とうとします。

効き方:
防御的反応を減らし、ストレスへの耐性を高めると言われています。


🔹ポジティブアファーメーション

これは、

「私はできる」
「私は成功する」
「私は素晴らしい」

など、前向きな言葉を繰り返す方法です。

気持ちを前向きにし、自信を高める効果が期待されますが、

👉 状態によっては「そんなふうに思えない」と違和感が生まれることもあります。

そのため、

👉 “現実や価値観に根ざした自己肯定”

であるセルフアファーメーションとは少し異なります。


🔹セルフコンパッション(自分への思いやり)

軸:
失敗や苦しみに直面している「ありのままの自分」に優しく接する。

ねらい:
「誰でも失敗する」「自分だけが苦しいわけではない」と捉え直し、自分を責めすぎないようにする。

心理学者クリスティン・ネフは、セルフコンパッションを次の3つで説明しています。

  • 自分への優しさ(自分を責めない)
  • 共通の人間性(苦しみを孤独化しない)
  • マインドフルネス(感情を大げさにせず受け止める)

効き方:
罪悪感や無力感、燃え尽きを和らげる効果が期待されています。


🔹違いを整理すると

セルフアファーメーション
→ 「自分の強み・価値観を思い出して立て直す」

セルフコンパッション
→ 「弱さや失敗を責めず、優しく支える」

つまり、

👉 強みを思い出して立て直すのがアファーメーション → 自分の『軸を再確認』する
👉 弱さを認めて支えるのがコンパッション → 自分の『心を回復』させる

という違いがあります。

どちらが大切かではなく、

👉 両方が必要

なのです。

介護現場ではどう活かされるのか

例えば、転倒事故やトラブルが起きた時、

セルフアファーメーションは

「自分は入居者の尊厳や安全を大切にしている」

と、自分の価値観に立ち返り、迷いを整理する場面で役立ちます。

一方で、

「今日は対応が上手くいかなかった」
「余裕がなかった」

そんな時に必要なのは、セルフコンパッションです。

「自分も人間だから失敗することはある」
「次に活かしていこう」

と、自分を責めすぎずに受け止めることで、心の回復につながっていきます。

状況によって、必要な“自分へのかかわり方”は違う

ここが最も重要なポイントです。

事故やトラブルが起きたとき

まず必要なのは振り返りです。

しかしその際に

「自分はダメだ」

となってしまうと、建設的な思考ができません。

そんな時は

👉 セルフアファーメーション

を使います。

「自分は安全を大切にしている」
「だからこそ、この出来事と向き合っている」

と、自分の価値観に立ち返ることで改善に向かう思考ができるようになります。

自分の対応に落ち込んだとき

例えば

・強い言い方をしてしまった
・余裕がなくなってしまった

そんな時は

👉 セルフコンパッション

が必要です。

「今日は余裕がなかった」
「それだけ大変な状況だった」

と、自分の状態を理解することが大切です。

そして

「次はどう関わるか」

を考えれば良いのです。

マインドフルネスとの関係

自分を責めすぎている時、人は無意識に感情へ飲み込まれやすくなります。

「自分はダメだ」
「また失敗した」

という思考に支配されると、自分の状態を客観的に見る余裕がなくなってしまいます。

セルフアファーメーションも、
セルフコンパッションも、

まずは「今、自分がどういう状態か」に気づく必要があります。

そこで土台となるのがマインドフルネスです。

まず必要なのは「自分の状態に気づくこと」

マインドフルネスとは、今の自分の状態に気づく力です。

・今、自分は焦っている
・余裕がない
・イライラしている

こうした状態に気づけなければ、

セルフアファーメーションも、セルフコンパッションも

うまく活かすことが難しくなります。

つまり

👉 気づく(マインドフルネス)
👉 支える(アファーメーション)
👉 癒す(コンパッション)

という関係になります。

良いケアは「自分との関係」から始まる

介護の仕事は、人と人の関係の仕事です。

しかし見落とされがちな関係があります。

それは

👉 自分自身との関係

です。

自分を責め続けている人は、

・余裕がなくなる
・言葉が強くなる
・視野が狭くなる

といった状態になりやすくなります。

逆に

自分を支えられる人は、

・他者にも優しくできる
・冷静に判断できる
・チームで支え合える

という姿勢を持ちやすくなります。

つまり

👉 良いケアは、自分との良い関係から生まれる

のです。

おわりに

介護職は、優しい人が多い仕事です。

しかしその優しさが、自分に向けられないことがあります。

利用者には優しくできるのに、自分には厳しい。

そんな人ほど、

セルフアファーメーションという考え方は必要です。

自分の価値に立ち返ること。
自分を支えること。

それは決して甘えではありません。

👉 専門職として長く良いケアを続けるための力

です。

「支える人」を支えることも必要

介護は、人を支える仕事です。

しかし「支える人自身」が壊れてしまっては、良いケアを続けることは難しくなります。

だからこそ、

自分を責め続けるのではなく、

👉 「自分を支える力」

もまた、介護職に必要な専門性なのかもしれません。

自分を支えることは、利用者を支えることにつながる

自分を大切にすることは、
結果として利用者を大切にすることにつながります。

まずは

「自分は何を大切にしているのか」

そこから、見つめ直してみてはいかがでしょうか。

ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。

詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!

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