入居を考えた時に確認しておいた方がいい事項
グループホームの入居条件については
- 絶対に満たしていなければいけない要件
- 満たしている必要があるが、絶対ではない場合もある
- 可能であれば満たしておいた方が良い。または施設による場合もある
- その他、入居を考えた時に確認しておいた方がいい事項
という4つの記事に分けてお伝えをしていきます。
4番目となるこの記事では、グループホームの利用を考えたときに『入居する方の『その人らしい生活』の実現や継続のために、確認しておいた方がいいと思われる事項』について説明いたします。
項目が多いので、前後編でお伝えいたします。今回は後編です。
生活習慣の継続についての確認事項
グループホームは言うなれば『赤の他人との共同生活』です。もちろんお互いに気を使ったり配慮をしなければならない部分も多く、思い通りに行かないことがあると思います。
ただ『施設に入ったからといって、今までの『自分らしさ』を押し殺し、やりたいことや続けたい習慣を我慢しなければいけない』ということも、違うのではないかなと思います。
例えば
- 飲酒
- 喫煙
- 趣味
- 地域の寄り合い
- 入居前から行っていた活動
などについては、継続が可能かどうかについて施設に確認をしておくと良いと思います。
①②については、施設によると思います。ただし入居するユニットに『医者から飲酒(喫煙)を止められている』方がいらっしゃる場合は、困難である事が多いと思いますが『屋外の見えないところで吸ってもらう』『居室の中でのみ飲酒可能』といったことで対応をしてもらえるかもしれません。
また③~⑤については家族の方の協力が必要になることもあるかと思いますが、それさえ得られれば継続していくハードルは一気に下がるでしょう。そういう意味でも家族間の意識の統一や、より多くの家族が協力してくれる体制を整えておくということは、非常に重要になります。
持ち込み可能な家具や思い出の品について
何をどこまで持ち込んで良いのか、というのは気になる部分かと思います。
実はグループホーム側としては『その方が今まで自宅で使っていた家具』は、極力持ってきていただきたいと考えています。
新しい環境であっても使い慣れた家具を使うことで、家具の使用に際しての混乱がなく不要なストレスを感じる機会を減らすことが出来ます。
また、自分が家で使っていた家具がある事で『この家具があるということは、ここは自分がいてもいい場所(いた場所)』と認識しやすくなるので、グループホームという新しい環境に慣れることが早くなるというメリットがあります。
そして『自分がいてもいい場所(いた場所)』としての認識を強めるため、家具以外にも持ち込んでいただけるとありがたいです。
私が今までに持ち込んでいただいたものとして
- (昔の)アルバム
- 日記帳
- 自宅にいた頃に趣味で作ったもの
- 仏壇
- 孫(ひ孫)の命名書
- 自分がやっていたお店の看板
などがありました。
特に仏壇や日記帳などは『習慣の継続』という意味でも非常に有用です。
線香の扱い、備えるご飯やお水はどうするかなどは施設の方で管理してもらえると思いますので、先ずは確認をしてみてください。そして可能であれば『それらを持ち込んで、習慣を継続するにはどうするか』ということを施設と一緒に考えてもらい、本人にとって穏やかで安心できる生活を、一緒に作り上げていただけると、施設ととても良い関係が築けていけると思います。
貴重品の取り扱いについて
- 現金
- 印鑑
- 通帳
- 貴金属類
などの持ち込みについては、お断りをされることがほとんどだと思います。
グループホームに入居する方については、これらの管理を自分自身で行えないことが多いです。
自分で管理ができないものを持ち込むとなると、現金や貴金属類は紛失の危険性がありますし、印鑑や通帳は第三者に存在を知られたら悪用されないとも限りません。
仮に本人がこれらを正しく管理できるとしても、他の入居者様が『自分のものと他者のもの』を正しく区別して取り扱いができるかどうかは別です。
また、万が一現金や貴金属類が無くなったとき『職員が盗ったのではないか』と家族の方に思われかねない可能性が常にあるという状況は、介護職員にとってのストレスやモチベーションの低下のみならず、その方との関わりを避けようとするある種の自己防衛にも繋がっていきます。
ただし人によっては『現金が手元にないと不安でしょうがない』『通帳は自分で保管することにこだわる』ということもあります。実際に私が関わってきた入居者様にもそういう方はいらっしゃいました。
そのような場合は『紛失することを前提で少額を持たせる』『自分で持つ通帳は使用できないように手続きをしておく』『施設に過失がない状況で紛失しても追及しない』などを施設と取り交わすことで持ち込めるかもしれませんが、基本的には止めておいた方がいいと思います。
長く生活するかもしれない施設との関係性を良い状態で保つためにも、関係性が悪化しかねない要因は極力排除しておくことを勧めます。
携帯電話の利用に関する留意点
携帯電話については、貴重品以上に難しい問題ですし、これからもっと難しくなってくる部分です。
基本的には持ち込んでいただくべきだと思います。現代人にとって携帯電話やスマートフォンが必須であるように、これらの使用に慣れた高齢者にとっても必須アイテムですし、家族からも気軽に連絡を取れる非常に優秀な道具です。
つまり『持つ側(入居者様)』にも『持たせる側(ご家族様)』にもメリットがあるのが携帯電話です。
一方で、認知症の進行に伴い、見当識や判断力の障害が進行したとき
- 自分が今どこにいるのか分からないが、自分の家の住所は分かるからタクシーを呼んで帰ろう
- テレビで見ていた通販番組の商品が欲しい
- 知らない番号からかかってきたので取ったら息子と名乗る人物だった
- 知らない番号からかかってきたので折り返したら息子と名乗る人物だった
- 自分の口座がどうなっているか不安だから、銀行に確認する(という電話を5分おきにしていた
- 自分の家に知らない人(職員や他入居者様)が大勢いるから警察に連絡しなければ
などとなったとき、携帯電話を持っていることで事態がどんどん複雑になっていくこともあり得ます。
対策としては
- 登録してある連絡先以外への発信ができない
- 登録してある連絡先でも、家族以外の連絡先の番号は『家族』や『施設』に変更する
- 連絡しそうなところ(銀行、警察、タクシー会社など)には、あらかじめ事情を説明しておく
といったところが挙げられます。
しかし、その方の人権や尊厳を考えたときに果たしてこの方法が最善なのか、ということに悩むと思います。実際、グループホームで入居者様やそのご家族様と関わっている私にも、いまだに正解が分かりません。
しかもこの先は、こういった機器の扱いに慣れた人がどんどんと入居してくるでしょう。
その時に、どのような判断を求められ、どのような対応が正しいのか、今から考えていく必要があると私自身感じています。
ですので、携帯電話を持ち込む場合は『どのような状態になったら、あるいは、どのような状況が起きたら、その方針を改めていくのか』ということは事前に話し合っておく必要があると思います。
前後編に分けて9つの項目についてお伝えいたしましたが、もちろんこれがすべてではないでしょう。
ただ『なぜ確認しておいた方がいい』のかという目的は、見誤らないようにしていただきたいです。
それは、住み慣れた家を離れ新しい場所で生活をすることとなった、みなさんにとって大切な方が、なるべく穏やかな新生活のスタートを切れるようにであり、笑顔多い生活をこれからも送っていくためです。
そして、新しい場所で生活を始める認知症の方を支援する介護職員とご家族様がより良い関係性を築き上げていくことで、入居する方の新しい生活は、より良いものとなっていくことでしょう。
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさんを発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
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