※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。
ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。
本記事では、グループホームの特徴や入居条件、選び方が分かります。
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はじめに
認知症の進行により、自宅での介護が難しくなった――そう感じた時に検討したいのが『グループホーム』です。
この記事では、グループホームの特徴や入居条件、選び方のポイントをお伝えします。
グループホームの定義と基本情報
グループホームとは『認知症対応型共同生活介護』が正式名称であり、地域密着型サービスと呼ばれるサービス類型です。これは、都道府県ではなく、市区町村が事業者の指定や監督を行っていることを表しています。
その名の通り『認知症』の方が『共同生活』を送りながら『介護』を受ける場です。
グループホームの利用にはいくつかの条件がありますが
- 要支援2、または、要介護1~要介護5である
- 認知症の診断があること
- 利用希望者の住民票が、施設が所在する市区町村と同一
が最低条件です。
その他にもいくつかの条件がある場合もありますが、最低でもこの3つは満たしていないと、どう頑張っても利用が出来ません。
グループホームが「地域密着型サービス」とされているのは、単に行政区分上の理由だけではありません。
そもそも、認知症ケアの根幹には“暮らしの継続”という考え方があります。
認知症の方にとって「見慣れた風景」「馴染みの人」「昔からの商店」など、日常の延長線上にある環境こそが、安心や安定をもたらすからです。
そのため、地域に根ざし、その方の“暮らしの記憶”が続いていくことを重視しているのが、グループホームの理念なのです。
これらの最低条件と、その他のいくつかの条件については、別の記事でご説明いたします。
- グループホーム入居の条件 その① ~要介護度・認知症診断・住民票の要件について~
- グループホーム入居の条件 その② ~集団生活の適応性と費用面~
- グループホーム入居の条件 その③ ~感染症・家族間の意識、医療依存度の影響とは~
- グループホーム入居の条件 番外編① ~面会・外出・急変時対応など5つのポイント~
- グループホーム入居の条件 番外編② ~それまでの習慣・持ち物・携帯電話の取り扱い~
グループホームの主な特徴とメリット
グループホームにはいくつかの特徴があります。
- 少人数での共同生活(ユニットケア)
- 家のような雰囲気を大事にし、今までしてきたことが継続できる
- 慣れ親しんだ土地での生活が続けられる
- 入居者が役割を持ち、家事などを分担しながら行う
といったところが大きな特徴かと思います。
その他にも『最期まで居られる』『24時間、認知症ケア専門の職員がいる』なども特徴かもしれませんが、グループホームという施設の大きな特徴としては、上記の4つかと思います。
※ただし、医療依存度が高まった場合など、施設や主治医の判断により転居が必要になることもあります。
一方で、グループホームはすべての方に向いているわけではありません。
医療依存度が高い方や、夜間に動きが多かったり、不眠などの症状がある方などは、職員体制の都合上、十分な対応が難しい場合もあります。
また、少人数制ゆえに「人間関係が密になりやすい」「馴染むまで時間がかかる」などの側面もあります。
こうした点を踏まえ、「本人にとって心地よい環境かどうか」を見極めることが、選び方の大切なポイントです。
グループホームの対象者と入居条件
ここからは、入居の適期や適性などについて、もう少し具体的に整理します。
グループホームを検討する“ベストタイミング”とは?
グループホームでは、本人が「できることを続ける」ことを大切にしています。
料理の手伝いや洗濯物をたたむ、掃除を一緒にするなど、役割を持つことが生活のリズムや自尊心の維持につながります。
そのため、自立度がある程度保たれている段階での入居が、最もその方らしい生活を続けやすいのです。
グループホームが向いている人・向いていない人
「もう少し家で頑張れるかも」と迷う時期こそ、実はグループホームを検討する良いタイミングでもあります。
つまり、グループホームに入居する方の対象としては『自宅での介護が困難になった認知症の方』という事になります。
これがどういうことかというと
- 認知症があることにより、本人と家族が今まで通りの生活を継続することに困難が生じている
- 自分で歩ける。自分の事は比較的自分で出来る(自立度が高い)
- 家族の介護力が限界を迎えつつある(迎えている)
といったことが挙げられます。
つまり、グループホームへの入居を考える方の多くは『身体的には元気だが、認知症があるため家での生活が困難』という方になります。
これが『認知症はあるが、寝たきり』であるとか『介護は必要だが、脳(主に記憶力や判断力)に異常はない』といった方であれば、自宅での介護は比較的行いやすいかと思います。
ですが『危険の判断ができない』『場所の認識ができない』『善悪の判断ができない』『感情を抑えることができない』『会話がかみ合わない』などの症状が日常的にあり、その上で身体的に問題がないとなると話が変わってきます。
そのような状態の方の介護や支援を、家族のみで(あるいはヘルパーを利用したとしても)自宅で行い続けること非常に困難ですし、遅かれ早かれ共倒れといった未来が見えてくると思います。
限界を感じる前に――それは“頑張りすぎのサイン”かも
別記事【認知症の家族と共に暮らす ~家族の絆と距離感を見直す~】でも書きましたが『家族介護を頑張り始めたタイミングは、次の段階を考え始めるタイミングでもある』であると思います。
上記のような方の対応に苦慮し悩まれていたらそれは「努力が足りないんじゃないか」「自分のせい」「親への愛情が足りないのではないか」といった問題ではありません。
そして、そう考えてしまうあなたは、十分過ぎるほど献身的に、愛情をもって自分の大切な人の介護をなさっているに違いありません。
ですが、今や、介護は家族だけで抱えるものではありません。
その「しんどさ」を感じた瞬間から、選択肢は必ず増やせます。
どうか一人で抱え込まず、次の一歩を一緒に考えましょう。
グループホームは“家族の笑顔”を取り戻す場所
入居されたご家族様からは
「家にいる時は毎日のように怒鳴りあっていたが、ここに入ってから、母の笑顔ってこんなだったなと思いだすことが出来た」
「夫にいつも怒られ、そのたびに頭を抱えて小さくなっていた義父でしたが、知り合いもいる環境で自由に過ごせる姿を見て、いつも嬉しくて泣いてしまう」
といった声を多くいただいております。
グループホームは単なる認知症の方のための施設というだけでなく『家族の関係性を再構築できる施設』『認知症の方の笑顔を取り戻す施設』とも言えるのです。
入居前に確認すべきポイントと手続き
施設への入居を考え始めたら、必ず、ケアマネージャーに相談しましょう。
どの施設が良いのか、といったアドバイスや提案から始まり、
- 施設管理者との橋渡し
- 見学のアポ取り
- 施設の特徴や特色
- その施設が持っている強み
- その施設に入ればどうなるのか
- その施設ではどういったケアが受けられるのか
といった、必要な情報の多くを教えてくれるでしょう。
もしケアマネージャーさんが持っていない情報を知りたいと思った時には、見学時に対応してくれた職員や管理者に必ず確認してください。
「うまく質問できるか不安…」という方も多いと思いますが、対応してくれた職員に「○○について聞いてもいいですか?」と率直に尋ねてみるだけでも大丈夫です。
施設側も「関心を持って見てくれている」と感じ、丁寧に対応してくれるはずです。
その上で、施設の管理者と直接話すことは、特に重要だと思います。
施設の管理者と話すと
- より詳細な施設の特徴
- 管理者が考える認知症ケアへの思い
- 認知症ケア専門の施設として目指しているもの
- 入居によって、本人と家族がどうなったかといった実例
などが聞けると思います。
そして見学の際には、施設の清潔さや設備だけでなく、ぜひ「職員と入居者の距離感」も観察してみてください。
職員が笑顔で声をかけているか、入居者の方が安心して話しかけているか――こうした雰囲気は、パンフレットやホームページでは伝わらない大切な情報です。
また、食事の匂いや生活音、掲示物などから「暮らしの温度」が感じられる施設は、ケアの質が安定している場合が多いといえます。
見学を通して「ここなら安心して任せられる」と思える直感も、大切な判断材料です。
それまで自分たちが家で支え続けてきた大切な方を任せる施設だからこそ、自分の目で確かめて、必要なことを聞いて確認し、決めていただきたいと思います。
また、管理者の方と話す際には『自分がどのような思いで認知症の方と関わって来たか』『大変だったこと・苦労したこと』『一緒に生活していて楽しかったこと』といった、今までの思いを伝えていただくことをお勧めします。
施設の職員や管理者は、日々認知症の方と関わっているからこそ、自宅で認知症の方を支え続ける苦労や困難、やるせなさや喜び、やりがいやちょっとした幸せなど、全てを受け止めて肯定してくれると思います。
その時に改めて『自分がとても頑張っていたこと』『自分の大切な人への思い』『自分は間違っていなかった』といったものを実感していただけるのではないかと思います。
グループホームは、認知症の方に穏やかな日常を取り戻していただくだけでなく、ご家族にとっても“心の余白”を取り戻す選択肢です。
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
参考記事


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