認知症の方とともに生きるための施設
たとえ認知症を患い、徐々に生活が変わってきたとしても、お互いが大事な家族であることに変わりはありません。
ですが、大切な家族であるからこそ――そして、お互いにとって大切な家族であり続けるため、『適度な距離をおく』ことも、時には必要です。
その距離が、お互いの関係を良い状態で維持する、あるいは改善させるために大いに役立つことを、私は今までの経験や多くのご家族様と関わる中で、実感してきました。
自宅での認知症の方の介護に困難さを感じてきたり、ちょっと疲れを感じてきたときは、施設の利用を考え始める時期といえるでしょう。
その際に候補に挙がってくる施設としては
- ショートステイ(短期入所生活介護)
- 特養(介護老人福祉施設)
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
といった施設になってくるかと思います。
それぞれがどういった施設で、どのような時に必要になるのか、簡単にお伝えします。
ショートステイ(短期入所生活介護)
名前の通り、短期間のお泊りが可能な施設です。
先に挙げた三つの中でこのサービスのみ、自宅に戻るために利用するサービスとなります(そうでない目的もありますが、他の二つのサービスは基本的に、入所・入居したら自宅に戻るという事はありません)。
利用の目的としては
- 介護者が休息を必要としたり、体調を崩したとき
- 冠婚葬祭などで介護が行えないとき
- 退院後の一時的な利用
- 入る介護施設が決まらないとき
といったところになります。
つまりどちらかといえば『サービスを受ける本人のため』というよりは『本人の生活を支える家族のため』といった色合いが濃いサービスになります。
『認知症とはいえ、親と一緒に生活をしたい。でもたまには息抜きをしたい』
『大事な親だけど、四六時中いっしょは……』
『退院したけど自宅での生活が難しい。でも次の場所が決まらない』
といった場合に利用すると効果的かと思います。
特養(介護老人福祉施設)
特養は、原則として65歳以上で、要介護3以上の方が利用することができます。
また、よく『終の棲家』とたとえられます。『介護を必要とする方が、最後まで利用できる場所』としての役割を求めて特養を希望する方が多い、ということが大きいと思います。
ただし
『他のサービスに比べて費用が安価であることが多い』
『施設内の設備が、要介護度が高い方でも対応できるように整っていることが多い』
『現在住んでいる場所に関係なく、別の市区町村の特養でも入所できる』
『看護師の配置が義務付けられている(常駐ではない)』
『医師の配置が義務付けられている(常駐ではない)』
といったところからも特養は人気があり、数年待ちの施設もありますので、早めの動き出しが必要となってくるでしょう。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームは、認知症ケアに特化した施設です。
利用するためには
- 認知症であること
- 要支援2か、要介護1〜要介護5であること
- 施設がある市区町村に住民票があること
といったことが必須になります。
ただ
- 入居している方は全員認知症なので、職員のケアも認知症に特化している
- 地域密着のサービスなので、慣れ親しんだ土地で暮らせる
- 少人数(ユニットケア)なので、その人のペースに合わせたケアが提供できる
といった様々なメリットがあります。
グループホームについては私の専門でもあるため、別の記事にて細かくお伝えいたします。
いずれの施設を利用する場合も、最初に相談するのは担当のケアマネージャーかと思います。
ケアマネージャーは、どのようなサービスを利用すれば、要介護状態となった方が在宅(自宅)で生活を送ることが出来るかを考えるプロです。
一方で、本人の状態、家族の介護力などを客観的に見極め、施設への橋渡しをしてくれる存在でもあります。
自宅で介護をしたい家族と、ケアマネージャーとの意見が割れることもあるかと思います。
しかしその根底には、どちらにも『要介護状態となって困っている人の生活を、より良くしたい』という思いが流れています。
『本人にとってより良い生活とは何か』を考えた先に『施設入居』という選択肢が浮かんできたときには、先ずは見学をしてみてください。
そして少しでも『そこで笑顔になっている大切な人の姿』が見えたのであれば、少し踏み出してみても良いのかなと思います。
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