※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。
ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。
【この記事で伝えたいこと】
認知症の在宅介護は、一人で抱え込んで耐え続けるものではありません。
早めに支えを受け、選択肢を増やしておくことで、家族自身が壊れずに介護を続けることができるということを、この記事でお伝えします。
【要点】
- 認知症の在宅介護は、心身をすり減らしやすい現実がある
改善しにくい病状、暴言・拒否、夜間対応、排泄の問題、常に付きまとう事故リスクなど「家族だからこそ苦しい」認知症介護の特性を、丁寧に言語化します。 - 苦しいと感じるのは自然な反応であり、我慢し続ける必要はありません
怒りや自己嫌悪、限界感は“家族の弱さ”ではなく、支援や調整が必要になっているサインであることを解説します。 - 限界になる前に動くための、具体的な支援と選択肢
ケアマネや地域包括支援センターへの相談、デイサービス・ショートステイ・訪問看護などを組み合わせることで「一人で背負わない在宅介護」が可能であることを紹介します。
【この記事で分かること】
・認知症の在宅介護が特に負担になりやすい理由
・家族が壊れないために、早めに考えておきたい視点
・悩んだ時に取れる具体的な動き方と相談先の考え方
在宅で認知症介護をしている家族が「今のままで大丈夫だろうか」と感じたときに、次の一歩を考えるための記事です。
※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。
5つの苦悩を振り返り、揺れる心を支えるためにできること
認知症の親を支え続けることは、想像していた以上に、心も体もすり減る営みです。
「私がやらなきゃ」「頑張るしかない」——そう言い聞かせながら毎日を回していても、気づけば限界に近づいていることがあります。
この補足記事では、シリーズ「家族が抱える認知症介護の苦悩」で取り上げた 5つの苦しみ をふり返りながら、
在宅介護で悩んだとき、どう動けばいいのか。
どこに頼ればいいのか。
そして、何より家族が“壊れないために”できることをまとめてお伝えします。
あなたが感じている不安や怒りや悲しみは、決してあなただけのものではありません。
どうか一人で抱え込みすぎず、この記事を読んで、少しでも重圧が軽くなれば嬉しいです。
家族介護に共通する「しんどさ」とは
シリーズを通して最も強く浮かび上がったのは“家族だからこそ苦しい”という現実でした。
生活が壊れていく苦しさ
睡眠時間が削られ、自由がなくなり、外出のたびに罪悪感がつきまとう。
「自分の人生が消えていく感じがする」と言う方も少なくありません。
人間関係が揺らぐ苦しさ
兄弟との温度差、友人との距離、仕事の調整、地域との摩擦――
介護によって、これまで大切にしてきた関係が変わってしまうことがある。
制度が助けてくれない苦しさ
「もっと使える制度があるはずなのに届かない」
「どこに相談したらいいかわからない」
制度の限界が、家族の孤立感を強めることもあります。
未来への不安という苦しさ
施設入所の迷い、これからの選択、親の最期との向き合い方――
正解のない問いを抱え続けることは、心のエネルギーを大きく奪います。
こうした苦しみは、人によって形は違っても、多くの家族が経験している「共通の痛み」です。
まず大切なのは、あなたのしんどさは“異常”ではなく、むしろ自然な反応だということです。
苦しいのは「我慢しなくていい」
介護の現場でよく聞く言葉があります。
「怒ってしまって自己嫌悪…」
「優しくできなかった…」
「もっと頑張れたはずなのに」
でも、覚えておいてほしいのは、
疲れ切っているときに優しくできないのは当然だということ。
そして、
怒ってしまった自分を責める必要はどこにもないということ。
人は追い詰められたとき、誰でも気持ちが揺らぎます。
それは“あなたが悪い”のではなく、
今の状況があまりにも過酷だからです。
「頑張りすぎなくていい」には根拠があります
・睡眠負債は判断力と感情コントロールを大きく低下させる
・介護者のストレスは“親の行動”ではなく“継続する緊張”によって蓄積する
・助けを呼ぶのは逃げではなく、むしろ“安全な介護”の第一歩
つまり、あなたが自分を大切にすることは、介護を続けるための必須条件なのです。
認知症の在宅介護は「普通の介護」とは違う難しさがある
特に、認知症の親を自宅で支える家族介護は、一般的な介護以上に困難を極めます。
これは決して大げさではなく、実際に多くの家族が限界に追い込まれるほどの負荷があります。
認知症介護には、次のような“特有のしんどさ”が重なります
- 認知症は基本的に改善が難しく、ゆっくり進行していく
- 罵倒・暴言・拒否・時には暴力があり、心が傷つく
- 夜眠れず、家族が寝不足になる
- 尿や便の失敗、後始末が日常的に続く
- 一人でいる時間はすべて、事故につながる恐れがある
- 本人も家族も「どうすればいいかわからない」状況が続く
これらは、体力・気力・判断力のすべてを削っていく負担です。
「普通の介護」ではなく“24時間、先が読めない介護”というのが認知症介護の本質です。
だからこそ——
早めに動くこと、選択肢を増やしておくこと、対策を先に打つことが何より重要なのです。
限界が来てからでは遅い
認知症介護は、家族の心身のエネルギーを「気づかないうちに」奪っていきます。
優しい人、真面目な人ほど無理を重ね、ある日突然、糸が切れてしまうことがあります。
・介護うつ
・夜間の徘徊対応で倒れる
・感情が爆発して自己嫌悪に陥る
・きょうだい関係や夫婦関係が壊れる
こうしたことは、珍しいことではありません。
むしろ“起こりやすいこと”だからこそ、事前に対策が必要なのです。
「困ってから相談する」から「困らないために相談する」へ
在宅介護を続けるために最も大切なのは、
“しんどくなる前に”ケアマネ・地域包括・医療と繋がっておくこと。
・デイサービスの早期利用
・ショートステイの定期利用
・訪問看護で夜間の不安を軽減
・環境調整で事故リスクを下げておく
・介護施設の見学をして、申し込んでおく
こうした対策は、家族の負担を減らすだけでなく、本人の安全も守ります。
頑張り続けて限界になってから動くのではなく、
「いつか必要になるから、今から準備する」
という姿勢が、認知症介護においては何よりの安全策です。
「こういう方法もある」—— 一人で抱え込まないための支援と選択肢
介護は家族だけで背負うものではありません。
今は「支えを組み合わせて介護する時代」です。
ここでは、悩んだときに動ける具体的な選択肢をまとめて紹介します。
ケアマネジャーに遠慮なく相談する
・利用できるサービスを洗い直す
・ショートステイの緊急利用
・担当変更も可能(相性はとても大事)
「こんなこと相談していいのかな?」と思う話ほど、むしろ相談していい内容です。
デイサービス・ショートステイの“使い分け”
・デイ:日中の負担軽減、専門職の目が入る安心
・ショート:休息・仕事・予定の確保、家庭内の緊張のリセット
「毎週必ず」ではなく、
“あなたがしんどくなる前に” 使うのが最も効果的です。
地域包括支援センターは「何でも相談できる窓口」
制度のことだけでなく、
・家族のストレス
・介護の限界
・金銭、仕事、きょうだい関係の悩み
など、幅広く受け止めてくれます。
「もう限界…」と感じたら、そこで相談して大丈夫です。
自分を守る視点も忘れない
・医療と介護の連携(早めの受診やサービス調整)
・転倒や事故を防ぐ環境調整
・家族会やオンラインコミュニティの活用
・仕事との両立のための制度(介護休業・短時間勤務など)
“自分が倒れたら終わり”ではなく、
“自分が倒れないための仕組み”をつくることが介護の一部です。
悩んだときの「動き方」のコツ
行き詰まったとき、迷ったとき、苦しくて涙が出そうなとき——
どう動けばいいのか迷いますよね。
そのために、家族がすぐに使える「3つのステップ」を置いておきます。
【ステップ1】まずは「自分の状態」を確認する
・疲れている
・眠れていない
・一人で背負っている
・感情がコントロールできない
これは“ダメな自分”の印ではなく、
“助けが必要だというサイン” です。
【ステップ2】一つだけでいいので相談先を決める
・ケアマネ
・地域包括
・かかりつけ医
・信頼できる家族・友人
完璧な選択である必要はありません。
誰かと話すことそのものが現状を動かします。
【ステップ3】「変えられるところ」から小さく変える
・週1回デイを増やす
・ショートを“計画的に”使う
・訪問看護で夜間の不安を軽減
・環境を少し整える
・家族の役割分担を見直す
ほんの小さな調整で、驚くほど心が軽くなることがあります。
それでも揺れるあなたへ
介護は、正解が見えない迷路のようなものです。
「これで良かったのだろうか」と、答えのない問いが心に残る日もあるでしょう。
でも——
あなたが必死に向き合ってきた時間は、決して無駄でも間違いでもありません。
迷いながらも続けてきた日々こそが、親御さんにとっては何よりの支えでした。
完璧じゃなくていい。優しくできない日があってもいい。
涙の日があって当たり前です。
どうか、
自分を責める言葉より、自分を労わる言葉を。
「頑張ってきたね」と、まずはあなた自身に言ってあげてください。
そして、しんどいときは、誰かに頼っていい。
助けを呼ぶことは「弱さ」ではなく、あなたと親御さんを守るための立派な行動です。
最後に
在宅介護は、一人で背負うにはあまりにも大きな重荷です。
それでも、あなたが今日まで続けてこられたのは、
親を思う優しさと、見えない努力の積み重ねがあったからこそ。
どうかこれからは「自分を守る介護」を少しずつ選んでください。
あなたの心が折れないように、
あなたがあなたらしく生きられるように、
そして、親御さんとの時間が少しでもあたたかく続くように——。
あなたの介護は、間違っていません。
あなたは十分頑張っています。
どうか今日だけは、深呼吸をして、自分の心にも優しくしてください。
このシリーズが、あなたが一人で抱え込まないための、小さな道しるべになれば幸いです。
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
参考記事


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