※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。
ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。
【この記事で伝えたいこと】
在宅介護によって“自分らしさ”が削られていく感覚は、決してあなた一人の問題でも、あなたの力不足でもありません。
そのつらさは自然なものであり、我慢する必要はないのです。
そして、介護者自身の心と体を守ることこそが、本人にとって最大の支援になるというメッセージをお伝えします。
【要点】
- 在宅介護のつらさは「当たり前」であり、あなただけのせいではない
24時間気が休まらない、時間が奪われる、身体が限界になる——こうした負担は、在宅介護では誰にでも起こる“自然な反応”です。 - つらさは我慢しなくて良い。自分を責める必要も無い
怒ってしまう日も、休みたい日もあって当然です。
介護を続けるためには、介護者自身のケアが欠かせません。 - 負担を軽くする制度・方法・相談先が必ずある
ケアマネへの相談、デイサービスやショートステイの活用、家族の役割分担、地域包括支援センターなど、あなたを支える手段は多く存在します。
【この記事で分かること】
・自分が感じているつらさが『異常ではなく正常である』ということ
・介護者自身が倒れないための、セルフケアの重要性とその理由
・支援制度を使うことは悪いことではなく、介護を受ける本人はもちろん、支援者のためでもあるということ
自宅で介護をする支援者の方に対して『あなたもまた大切にされるべき存在』であるというメッセージを届けたいです。
※詳しい説明・根拠・事例は、このあと本文でやさしく解説します。
はじめに
在宅で認知症の親を支える家族介護は、想像以上に過酷です。
とくに「生活そのものが壊れていくような感覚」は、誰にでも起こり得るものです。
24時間気が休まらない毎日。
自分の時間が一秒もないように感じる日々。
限界を超えた体力。
そして、医療や介護の費用という現実的な重圧。
この記事では、家族介護者が感じやすい“生活崩壊”の側面を、あなたの気持ちに寄り添いながら整理していきます。そして最後に、少しでも負担を軽くするための具体的な方法もお伝えします。
あなたが感じている「しんどさ」は、決して特別なものではないのです。
「24時間、気が休まらない」——終わりのない緊張と警戒心
在宅介護で共通する悩みのひとつが「常に気を張っている状態が続く」ということです。
- 夜中にトイレへ行こうとして転倒しないだろうか
- 朝起きたら部屋からいなくなっているのでは
- ガスを触っていないか
- 外に出てしまわないか
気にし始めると、きりがありません。
「もし何かあったら」と考えるほど、あなたの脳は休む暇をなくし、交感神経が働きっぱなしになります。
“休めていないのに頑張り続けてしまう”介護者のリアル
ある家族介護者は、こう話していました。
「寝ているときでさえ耳が起きているような感覚でした。ドアが開く音、床がきしむ音、すべてに反応してしまうんです」
この緊張は誰にでも起こる自然な反応です。
そしてこの反応は、決してあなたが弱いからではありません。
“大切な人を守りたい”という強い気持ちの裏返しなのです。
緊張が積み重なると、心と体は確実にすり減っていく
しかしこの状態が続くと、心身の消耗は避けられません。まずは「気が休まらないのは普通のこと」と知るところから始めましょう。
眠っているのに休めていない状態が続くと、心はいつの間にか悲鳴を上げてしまいます。
まずは、この緊張そのものが“すでに限界のサイン”だと受け止めてください。
「自分の時間が一秒もない」——生活が丸ごと奪われる感覚
認知症介護は、無慈悲にあなたの時間を奪います。
- 食事
- トイレ
- 服薬
- デイサービスの準備
- 受診の付き添い
- 夜間の見守り
これらが積み重なり、気づくと一日が終わっています。
家事・仕事・育児と両立していれば、なおさら自分の時間は消えてしまうことでしょう。
自分の時間が奪われると“生活の質”そのものが変わってしまう
「寝るのも食べるのも“急いでやること”になった。ゆっくりコーヒーを飲むことすら贅沢に感じた」
そんな声も多く聞きます。
本来なら、自分の時間を確保することは、人間が心身ともに健康に生きる上で必要なのです。
それでも介護をしていると「自分の時間を取るなんて贅沢」「親を放って遊ぶなんてできない」と罪悪感を持ってしまう方も少なくありません。
罪悪感はあなたの優しさから生まれるもの
でも、どうか覚えていてください。
あなたが自分の時間を持つことは「わがまま」ではなく、介護を続けるために必要な“メンテナンス”なのです。
あなたの時間は、あなたが思っている以上に大切な資源です。
ほんの数分でも構いません。
“自分のためだけの時間”を持てた日は、それだけで大きな前進なのです。
「もう限界…」と感じるほどの身体的負担
睡眠不足
夜間のトイレ介助、昼夜逆転、徘徊…
睡眠が分断されると、疲れは取れません。
「3時間寝られれば良いほう」という声も珍しくありません。
腰痛・関節の痛み
移乗、座位保持、入浴介助など、認知症介護でも身体を使う場面は多くあります。
「抱え起こすたび“グキッ”といくのではと怖い」
「自分の体のケアをする余裕がない」
無理をすると、ぎっくり腰・椎間板ヘルニア・肩の腱板損傷など、長期離脱につながるケースも多くあります。
常に疲れている
認知症介護は“体力×気力”の両方を使うため、肉体的な疲れだけでなく精神的疲労も重なっていきます。
「疲れた」と思うのは甘えではありません。
誰だって限界はある。あなたも例外ではありません。
体が悲鳴を上げていても「まだ大丈夫」と無理をしてしまうのが介護者の特徴です。
けれど、限界を超える前に休むことこそが、介護を続けるための正しい選択なのです。
介護費用・医療費の重圧 —— 生活そのものへの影響
介護が長期化すると、どうしても費用がかさみます。
- 通院の交通費
- 介護用品代
- デイサービスなどの一部負担金
- おむつ代
- 福祉用具のレンタル料
- 仕事を減らしたことによる収入低下
一つひとつは小さく見えても、積み重なると大きな負担になります。
さらに「お金がかかるからデイサービスを減らすしかない」といった選択が、結果的に介護負担を増やしてしまうこともあります。
お金の不安は、心と体の負担を何倍にも大きくする
金銭面のストレスは、身体的・精神的な負担をさらに重くする大きな要因です。
お金の悩みは、一人で抱えるほど不安が膨らむものです。少しでも早い段階で相談することで、負担を軽くできる選択肢が見つかることも珍しくありません。
苦しいことを、我慢しなくていい
ここまで読んで「自分もそうだ」と思った方も多いのではないでしょうか。
でも、どうか一つだけ覚えておいてください。
あなたがつらいのは、弱いからではありません。
頑張りすぎているからです。
- 寝られない日があってもいい
- もう嫌だと思う日があって当たり前
- 怒ってしまうこともある
- ため息ばかり出る日もある
それは“誠実に向き合っている証拠”です。
どうか、自分を責めないでください。
気持ちが沈む日があっても、それは「弱さ」ではなく“人として当たり前の反応”です。
あなたが抱えている重さは、誰が背負ってもつらいものなのです。
「こういう方法もある」——負担を減らすための選択肢
ケアマネジャーなど、頼れる人に遠慮しない
利用者本人のことだけでなく、介護をする家族の負担も「介護に関わる課題」です。
「夜眠れなくなってきた」「限界を感じている」と遠慮なく相談してみましょう。
- デイサービスの追加
- ショートステイの利用
- 夜間支援の提案
- 生活援助の組み直し
など、現在の資源でできうる、多くの調整や選択肢の提案をしてくれることでしょう。
「こんなこと相談してもいいのかな?」と思うようなことほど、話してみる価値があります。あなたの悩みを整理して、要介護者の支援に繋げていくことも、ケアマネの大切な役割の一つです。
ショートステイは罪悪感なく使う
「親を預けるのはかわいそう」
「自分がしんどいから使うのはダメ」
そんな声をよく聞きますが、まったく逆です。
ショートステイは“休息を確保するための制度”です。
あなたが休めなければ在宅介護は崩れてしまう。
だからこそ制度として存在しているのです。
少し距離を置くことで、冷静な気持ちを取り戻せることもあります。あなたの休息は、結果的に介護の継続に繋がり、関わる全員の安心にも繋がるのです。
使っていい支援制度
- 訪問介護(生活援助もOK)
- デイサービス
- 地域包括支援センター
- 介護用品の給付
- 医療費助成
- 家族会や相談窓口
特に地域包括支援センターは「どこに相談すればいいかわからない」人のための窓口です。
迷ったら、まずここに連絡すると道が開けます。
制度は“困ってから使うもの”ではなく“困る前から使っていいもの”です。
あなたが少しでも楽になるための道具として、遠慮なく活用してください。
家族一人で抱えない
兄弟・親戚・配偶者に「役割を振り分ける」「できる範囲でお願いする」ことは、あなたの負担軽減につながります。
「誰かに頼ること」は、決して負けでも放棄でもありません。それは、長くケアを続けるために必要な、賢い選択です。
一人で抱え込み過ぎることは、最も大きなリスクといっても過言ではないのです。
自分のケアを「優先課題」にする
- 一時間だけ散歩する
- 気兼ねなく寝られる日を作る
- 好きな食べ物を食べる
- 誰かに話を聞いてもらう
- カウンセリングを利用する
これはわがままでも逃げでもありません。
ほんの小さな習慣が、心と体を守る“下支え”になります。自分を労わることは、あなたが思う以上に大切な介護の一部です。
あなたの健康を守るため――そして、要介護者の生活を守るためにも、必要なのです。
最後に —— あなたが壊れてしまっては意味がない
介護は「気持ち」と「体力」と「生活」を同時に削ります。
その中で「自分が壊れないように」支えるのは本当に難しいことです。
でも、どうかこう思ってください。
あなたが元気でいることは、本人にとっても最大の安心であり、最大の支援です。
この記事が、あなたの背負っている重さを少しでも軽くできていたら嬉しいです。
そして、どうか無理をしすぎないでください。
あなたもまた、大切にされるべき一人の人間なのですから。
あなたが大切にしてきた日常や心の余裕を、もう一度取り戻せるように、たとえ一つだけでも、自分に優しい選択をしてあげてください。
ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさんを発信しています。
詳しくは ➡【はじめての方へ ここにんってどんなブログ?】をご覧ください!
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