高齢者介護のコミュニケーション:加齢性難聴 ~「伝わる」関わりのポイント~

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コミュニケーションとは

コミュニケーションという言葉を知らない、聞いたことが無いという方は、おそらくいらっしゃらないでしょう。それくらい、なじみのある横文字の一つであるかと思います。

コミュニケーションとは『双方向のやり取り』『お互いに理解する』ことであり『相手に言ったけど反応がない』『聞いたけど返事をしない』『伝えたつもりだが違うことをやっていた』というのは、コミュニケーションが取れているとは言えないでしょう。


コミュニケーションとは一般的に『意思疎通』『伝達』という意味を持っています。

  • 意思疎通:相互で同じ認識を持つ。互いの理解を深める
  • 伝達:情報や意思を伝える

といったことが『コミュニケーション』には必要です。

この『コミュニケーション』の要件を考えた時に、難聴であったり、理解力が低下した高齢者の方との意思疎通がいかに難しいかということは言うまでもないでしょう。

介護という『人対人』の仕事、現場では『利用者様・入居者様とのコミュニケーション』『職員間でのコミュニケーション』の必要性が非常に高くなっています。

今回は『加齢性難聴』の入居者様とのコミュニケーションの工夫について、お伝えします。

認知症に起因するコミュニケーションの困難さの工夫については、本記事下にある【関連記事】を参考にしてください。

加齢性難聴の特徴

問題は”伝え方”ではなく”聞こえ方”である場合も

加齢性難聴は、主に耳の中の変化、あるいは耳から脳に繋がる神経の変化という二つの要因があります。

そしてこれらの変化が『加齢により引き起こされている』ということが重要であり『理解力や判断力に問題は無いが、聞く力が低下している』ということです。

つまり、認知症に起因するコミュニケーションの困難さとは全くの別物です。

ですので、必要な視点や対応の工夫も全く異なってくるので『コミュニケーションを取ることが困難な人』と一くくりにしてしまうと、聞こえづらい本人も、その方を支えようとする介護者も、ともにストレスを抱えることとなってしまうでしょう。

加齢性難聴の原因①:内耳の老化

高齢になると、耳の中に変化が起こり聴力が低下していきます。

主な原因として、音を電気信号に変える『有毛細胞』という感覚細胞の毛が折れたり、細胞が剥がれ落ちるなどして数が減少していくため、高い音が聞こえづらくなっていきます。

加齢性難聴の原因②:神経の老化

内耳に変化がなく、音を電気信号に変換できたとしても、音を脳に伝える神経経路の機能が低下すると『聞こえていても聞こえていない』という状態になります。

聞こえにくさが”コミュニケーションの壁”に

原因①、原因②ともに、加齢によって生じている身体的な変化――ある意味では、起こるべくして起こる自然現象、ともいえるでしょう。

また現在は、加齢性難聴を治療する薬はありません。

加齢性難聴に対しては、補聴器の利用や聴覚リハビリなどが対策として挙げられます。

特に補聴器については、早期から活用することでコミュニケーション能力の維持が期待できます。

また医師の指導のもとで行う『聴覚リハビリ』を行うことで、脳が音に慣れるように訓練することも有効でしょう。

ですがそれらの方法以外でも、工夫することで耳が聞こえづらくなってきた方とのコミュニケーションが取りやすくなるような方法もあります。以下がその一例です。

高齢者とのコミュニケーションのコツ①:筆談

聴力は落ちているものの、視力や文章の理解力が保持できている方に対しては、非常に有効です。

抑えるべきポイントとしては、以下の二点です。

  1. 短く簡潔に書く
  2. 漢字を適切に使う

①については、理解力に問題がないとはいえ、やはり長文は理解しづらいものです。また、長文を書くにはどうしても時間がかかってしまうので、会話のテンポが悪くなったり、相手を長く待たせてしまったり、急いで書こうとして字が汚くなりかえって伝わりづらかったり、ということがあります。

②については、多少漢字を間違えても文脈から判断できるとは思いますが、しかし相手にとって『分かりやすい文章』『正しく伝わる文章』とは何かと考えた時、やはり適切な漢字の使用は必要かと思います。また、ひらがなばかりだと意味が分かりにくくなる場合もあるでしょう。

またタブレットの利用なども有効でしょう。

高齢者とのコミュニケーションとのコツ②:ノンバーバルコミュニケーション

ノンバーバルコミュニケーションとは『言語以外の方法で相手に情報を伝える』コミュニケーション(非言語コミュニケーション)のことです。

人は、コミュニケーションを取る時に受け取る情報を100とすると、相手が発した言葉から受け取る情報はおよそ1割程度に過ぎません。

残りの9割は非言語からであり、声のトーンや口調、声の大きさや話す速さといった『耳から入る情報』が約4割、相手の態度や視線、表情といった『目から入る情報』が約5割といわれています。

つまり、言葉が良く聞こえない相手であっても、こちらが非言語的な情報をどう発信するか意識したり工夫することで、伝えたいことの約9割は伝えられる、ということです。

高齢者と関わろうとした時に、このテクニックを使わない手は無いと、私は思います。

ただしノンバーバルコミュニケーションは、伝えようとする内容をコントロールすることが難しいという特徴もあります。例えば『隠そうとしている感情が表情に出てしまう』といったことです。『目は口ほどに物を言う』ということわざがあるように、昔からノンバーバルコミュニケーションの重要性が説かれていました。

今回は主に、加齢性難聴によりコミュニケーションが取りづらい方の特徴や対応についてお伝えさせて頂きました。

ただ『ノンバーバルコミュニケーション』については、認知症の方と円滑なコミュニケーションを取るためにも非常に有用なテクニックです。

高齢者介護を幅広く行う介護職員の方などは、ぜひ学び、身につけ、活用していただくことをお勧めします。

そうして表現力が上がり、言葉でのコミュニケーションが困難な方であっても、伝えたいことがより正確に伝わることで、相互の安心感や信頼感に繋がっていき、より良いコミュニケーションが取れるようになっていくことと思います。

ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさんを発信しています。

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