グループホーム入居の条件 その② ~集団生活の適応性と費用面~

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※この記事は、認知症グループホームで10年以上勤務し、現在は管理者として働く筆者が執筆しています。

ご本人・ご家族・介護職員、それぞれの立場をふまえたケアの視点をお届けします。

本記事では、グループホームで求められる“集団生活の適応性”と“費用の目安”が分かります。
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入居条件:必須ではないが、多くの施設で求められている

「親を施設に入れるなんて…」と悩まれる方も少なくありません。
しかし、グループホームは“家族の介護を放棄する場所”ではなく“本人が安心して暮らすためのもう一つの家”であり支援者の生活を守るための場所”でもあります。
家族が安心して笑顔で関わり続けるためにも、正しい情報を知って選ぶことが大切です。

グループホームの入居条件については

  • 絶対に満たしていなければいけない要件
  • 必須ではないが、多くの施設で求められている
  • 入居に際して障害となる可能性がある条件
  • その他、入居を考えた時に確認しておいた方がいい事項

という4つの記事に分けてお伝えをしていきます。

2番目となるこの記事では、グループホームの利用を考えたときにいくつかある条件の中で『多くの施設で求められる要件だが、必須ではない場合もある』について説明いたします。

また、その要件を満たしていなかった場合はどうすればいいのか、ということについてもお伝えをしようと思いますので、参考にしていただければ幸いです。

「集団生活に適応できるか」が大切な理由

グループホームは共同生活です。施設内には同じ市区町村の人しかいないとはいえ、全員が顔なじみということは先ずありえませんし、全員を知っていることもありえません。

つまり、全く知らない人とも共同生活を送らなければいけません。場合によっては『相手は自分の事を知っているが、こっちは知らない』という状況も十分にありえます。

では、グループホームで求められる『集団生活が可能』というレベルは、どの程度でしょうか。

グループホームでの受け入れが可能な『集団生活』とは

施設によって許容度の差はあるかもしれませんが、基本的には『他害、自害がなければOK』という施設がほとんどだと思います。

例えば

  • 強い興奮や暴力的な言動が繰り返し見られ、周囲の方との安定して共同生活が難しい場合
  • ご自身を傷つけるような行動が繰り返し見られ、ご本人の安全を確保する事が難しい場合

は入居が難しい、ということになってきます。

人付き合いが苦手でも大丈夫?

『元来内向的な性格であり、他者と関わることが苦手』程度であれば全く問題はありません。

そういった方とも信頼関係を築き、穏やかに笑顔で生活をしてもらうことこそ、グループホームの目指すべきケアの姿であり、本来のあり方です。

その一方で『他の入居者様や職員に、頻繁に手が出る、頻繁に暴言を吐く』といった状況では受け入れづらく、ましてや認知症によってそれらの行動に理性でブレーキが掛けられなければ集団生活は難しいでしょう。

また自傷行為がある場合も難しいです。配置する職員の人数がある程度決まってしまっているグループホームでは、一人につきっきりで介護を行うという状況は困難です。そうなると、その方の安全を守る(自傷行為を防ぎきる)ことができません。

グループホームはあくまで『専門的なケアを受け、認知症になっても笑顔でその人らしい穏やかな生活が送れる』を目指す場所であり、認知症であれば誰でも使える訳ではないのです。

もし、集団生活が難しい場合の選択肢と相談先

集団生活への適応が難しい場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。
たとえば――

  • 医師に症状の安定化(薬の調整など)を相談する
  • ケアマネジャーに少人数デイサービスや短期入所(ショートステイ)の利用を相談する
  • 施設見学時に「共同生活が難しいケースへの対応経験」を質問してみる

また、グループホームを検討する際は、施設見学時に「過去にこうしたケースがあったか」「どのように対応したか」を具体的に尋ねてみるのも有効です。
施設によっては「特定の時間帯だけ落ち着かない」「特定の刺激で不安が出やすい」といったケースに対して、環境調整や個別ケアの工夫で対応していることもあります。

そのため「できないかもしれない」ではなく「どんな工夫で支えられるか」という視点で相談することが、本人に合った居場所を見つける第一歩になります。

実際、初期対応や環境調整で落ち着くケースも多く、最初から“入居不可”と判断されることはまれです。
大切なのは「本人の特性に合う環境」を探す視点です。

グループホームの費用はいくらかかる?

グループホームの費用は、何にかかるのか?

グループホームの費用は、特別養護老人ホームなどの公的施設と比べると、やや高めであることが多いです。

グループホームの月額費用はおおむね 15〜25万円 が目安です。
厚生労働省「介護給付費実態調査(令和5年度)」によると、全国平均では約18万円前後が一般的とされています。【1】
ただし、地域によって家賃や人件費の差が大きく、都市部では20万円を超える施設も少なくありません
実際、東京都福祉保健局が公開している「介護サービス事業概要(令和5年版)」などの資料を参照すると、都内の施設では月額22万円前後となるケースも多いようです。【2】

内訳としては

  • 月額費用(家賃、食費、水光熱費、管理費など):おおむね、15万円~20万円
  • 介護費用(要介護度別の自己負担額と、グループホームで算定しているサービス加算金)
  • 医療費、薬代
  • 介護用品(おむつ、リハビリパンツ、パッドなど)
  • 介護用品のレンタル代
  • 理美容代
  • 日用品、し好品

といった金額が掛かります。

また退居をする際には、使用していた居室の復旧代(居室のクリーニング、壁紙の張替えなど)がかかる場合もあります。

公的支援や助成制度

民間介護施設であるグループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などでは減免制度(介護保険負担限度額認定制度)の適用対象外となることが多く、結果として費用負担をが大きく感じてられてしまうことが多いかと思います。

その点、公的施設(特養、老健、介護医療院、地域密着型特養、ショートステイなど)は、条件を満たす必要があるとはいえ減免の対象となるため、費用が抑えやすい一方で入居難易度は高くなります。

市区町村によっては「家賃助成制度」を設けているところもあります。申請の条件、申請の方法、助成金額は自治体により異なります。また自治体独自の助成を設けているところもあるようですので、居住地の担当窓口に確認するとよいかと思います。

また家族間でフォローが出来れば、グループホームを利用する難易度はぐっと下がるでしょう。

とはいえそれぞれの生活もあるかと思いますので

『グループホームを利用した場合の金銭的な負担感と、利用しなかった場合の日常的な介護の負担感』

『グループホームを利用した場合と利用しなかった場合の本人の安心と安全』

といったところを天秤にかけながら、より良い選択ができるとよいと思います。

またそういった選択を迫られた際には、主介護者が一人で考えるのではなく、家族や親族はもちろんですが、ケアマネージャーなどの外部の視点も入れながら考えることをお勧めいたします。

まとめ

認知症の親の入居を検討するとき、多くのご家族が「もう少し自宅で頑張れたのでは」と自分を責めてしまいます。
それは「親を思う気持ちが強いからこそ」生まれる感情です。

しかし、グループホームへの入居は“あきらめ”ではなく“支え方を変える選択”です。

本人の安心と安全、そして家族の生活を両立させるための一つの形として、前向きに捉えてほしいと思います。


【補足】本記事の参考文献・出典

  • 【1】厚生労働省「介護給付費実態調査(令和5年度)」、東京都福祉保健局「介護サービス事業概要(令和5年版)」など
  • 【2】東京都福祉保健局「介護サービス事業概要(令和5年版)」※該当数値(都内平均22万円)については明確な該当ページの記載が確認できていないため、目安値として記載しています。

ここにんでは、認知症介護を”楽にする”ためのヒントとなるような考え方、技術をたくさん発信しています。

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